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ゼクは1人一行から離れて、城下があった場所まで降りてきていた。
16年前、襲い来る魔物の軍勢を己の騎士道のもとに滅殺した場所であった。
何の因果か、当時と同じく雨が降っている。
｢…なーにが盾になる、だ。ひと振りの剣にもなってねーじゃねーかよ。｣
当時の自分を、今のゼクが鼻で笑う。
それは、ただの嘲りか。
それとも、戒めなのか。
当時に思いを馳せていると、遠くで馬蹄の音がした様な気がした。
｢……しつこいヤツだな、タンク野郎。｣
言いながらゼクは、一行の下へと戻る為足早にその場を後にする。
───
途中、捜索で遠征してきたデルカダール兵と鉢合わせになりそうだったが息を潜めてやり過ごしなんとかゼクは、一行と合流を果たす。
｢ゼク！お前、どこ行ってたんだよ。心配したんだぞ。｣
｢
心配した、と言うカミュだが、照れ隠しなのか言い方がきつく感じ、ゼクは素直に謝る。
｢ゼクよ、姫と一緒ではなかったのかの？｣
｢いや…俺は1人で……いねーのか？｣
ゼクが怪訝そうに聞けば、ロウはこくり、と首肯した。
仲間の顔を見れば、一行の決定権を持つ勇者もいなかった。
｢イレブンさまも、いなくて……｣
｢2人、一緒だといいんだけど…｣
｢心配じゃが、わし達はここで待とう。｣
ロウの提案に、皆が頷く。
その時、ベロニカがひとつくしゃみをした。
｢俺がここで待ってるから、お前ら雨宿りしてこい。｣
｢…私も、ここで待ちますわ。｣
｢女は体冷やすもんじゃねーよ。｣
｢そうよ〜、お言葉に甘えて雨宿りしてきましょうよ〜。｣
でも…！、とごねるセーニャを強引に行くわよ、とベロニカが連れていく。
｢どれ、わし達も雨宿りに行くかの。｣
ロウが歩き出すと、シルビアもそれに続いた。
だが、カミュは動かない。
ゼクも何か言うわけでもなく、ただ雨に打たれている。
｢どこ行ってたんだよ…｣
｢城跡にはいたぞ。｣
誰も見ていないからなのか、カミュは濡れて水が滴っているゼクのベストを指で挟んだ。
くっ、と後ろへ身体が引かれゼクはチラリ、とそこへ視線を向ける。
｢心配、したんだからな…追手も来てるし。｣
｢悪かったって…｣
振り返りベストを挟んでる指に自分のを絡め、右手で俯くカミュの顔をクイッ、とあげる。
雨に濡れながら、触れるだけの戯れをする。
｢許せよ…｣
｢そんなんで許せるかよ。｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
