表彰式 ページ39
身支度を整えたゼクは、先にコロシアムへ向かったシルビアを追いかけて部屋を出た。
部屋の外に出ると、カミュが扉横の壁によりかかっていた。
「カミュ…先に行ってると思ってたぜ。」
「オレが待ちたかっただけだ。」
そうか、と納得しゼクは廊下を歩き出す。
その後をカミュが着いてくる。
だが、ゼクはここで違和感を覚えた。
いつもなら早く行くぞ、と散歩に行く前の犬の様に先導する青が赫の後ろを歩いている。
ピタリ、とゼクが足を止めると、カミュが隣で止まった。
「どうした、ゼク?忘れ物でもしたか?」
「お前じゃねーから、してねーよ。いや…カミュ、腰「言うな、思い出すから。」
カミュはゼクの言葉を遮って、続きを言わせなかった。
ただ、それだけで相手の状態を把握してしまったゼクにカミュは腰を撫でられた。
「ヤバそーなら言えよ?」
「言えるかよ…」
言いふらすような性格を互いにしてないのは分かっていた為、そらそーだ、とゼクは苦笑するしかなかった。
「ま、無理はすんなよー。」
「ったく、誰のせいだと思ってんだ。」
俺のせいだな、と言うゼクだったが、煽るお前も同罪だ、と内心思うのだった。
───
一行に用意された席は、リングに近い最前列の特等席であった。
進行役の合図で、イレブンとハンフリーがリングへと上がった。
進行役が淡々と表彰式を始めようとすると、ハンフリーからイレブンへエキシビションマッチの提案がされた。
「エキシビションって、なんでまた。」
「アイツなりのケジメの付け方なんだろーよ。」
「ホント、男って何かにつけて戦いたがるわよね。」
そう言いながら、ベロニカの視線は斜め後ろのゼクへと向けられた。
「はぁ?いつ、俺が理由つけて戦いたいんですーって言ったよ!」
「だって、そうじゃない!毎回毎回、魔物見つける度に突撃して!逃げて行きそうな魔物追いかけてまで、戦ってるでしょ!」
「んだよ、文句あんのかよ。」
「ありありよ!」
今にも場外乱闘が始まりそうなのを、ゼクをカミュがベロニカをセーニャが宥める。
その間にエキシビションマッチが始まるも、強者のエキスに頼りらないと決めたハンフリーは呆気なくイレブンによってリングへ沈んだ。
一瞬、場内は静寂に包まれた。
だがひとつの強さへの疑問が、波紋となってどよめきと変わり静寂は侵食されていった。
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作者名:春月是駒 | 作成日時:2023年4月1日 23時