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魔法少女の言い合い相手を見て、イレブンがそう呟いた。
ゼクが知ってる子かを尋ねると、勇者は町の入口で目撃した事を教えてきた。
｢で、こうなった経緯は？｣
言い合いを見ていたカミュは、セーニャに説明を求めた。
どうやら、道を歩いていたら黒髪ツンツンヘアーの男の子が魔法少女の杖をひったくり、それを追いかけてきて今に至るという。
｢カミュ、出番。｣
そういってゼクはカミュの肩をポン、と叩き、イレブンもカミュを任せた、言わんばかりに見ていた。
ため息ひとつつき、盗賊は男の子の背にある魔法少女の杖をいとも簡単に取り返し肩に杖を担いで正面へと回った。
それを見て男の子は、あっ、と声を上げた。
盗賊は取り返した杖を、魔法少女へと渡し持ち主に戻った。
それでも、何故杖を盗ったのか知りたいらしくベロニカは男の子に問いかけた。
｢……ねぇ、アンタ。あたしの杖を盗んで、どうするつもりだったの？売っても、大した値にはならないわよ？｣
魔法少女は問いかけたが、男の子は黙ったまま視線を地面へと落とした。
そこへもう1人の男の子が、2人の間に割って入ってきた。
｢……なんだ、お前？｣
その男の子に皆の視線が集まるが、喋りはしなかった。
必死に身振り手振りで何かを伝えようとしていることだけは、伝わったが内容までは伝わりはしなかった。
｢あーもう……しょうがねぇな。ヤヒム。オレが説明するから、ムリすんな。｣
そう言ってツンツンヘアーの男の子は、代わりに説明し始めた。
｢オレはラッドで、こいつはダチのヤヒム。こいつは、この町の町長ラハディオさんのひとり息子なんだ。｣
ラッドの話によると、ヤヒムと一緒に遊んでいたが数日前に声が出なくなったという。
原因を聞いてはみたが、声が出ない為意思疎通が出来なかったという。
そこでたまたま一行が町にやって来て、魔法使いの杖でも使えば治せると思っての行動だったようだ。
｢……そういう事情なら、しょうがないか。それより、声が出なくなったっていうヤヒムって子のほうが放っておけないわね。｣
ベロニカがヤヒムを心配してそう言うと、僧侶である妹セーニャがヤヒムの喉に指先を当てて診た。
原因としては、とても強力な呪いを掛けられたからだという。
｢解呪の方法は、あんのか？｣
｢はい。さえずりの蜜という魔法の蜜があれば呪いは解けると思いますが、それを作るには清き泉に湧く神聖な水が必要ですわ。｣
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作者名：春月是駒 | 作成日時：2023年4月1日 23時
