6Fr 過去編��-9 ページ49
「私さ、」
鈴が立ち止まって口を開いた。例に倣うように、みんなの足も止まる。
「私たち……このチームだったらさ、どこまでも行ける気がするんだ。今日泳いでて、そう思ったの」
どこまでも……。
「……うん、そうだね。私も、そう思うよ」
指先に、瓶を伝った水滴が触れた。
そうだ。今日のレースは、今までで、一番──。
「どこまでも、か。確かに、このメンバーだったら全国大会にだって出られるかも」
思考の途中で聞こえてきた梓の声の方へ、私は顔を向けた。
梓は、夏らしい、澄み渡った空を見上げていた。
「夢みたいな話だなあ…」
私も思わず、零れた。
本当に、夢のようだと思う。
今日の光景も。それが全国で、今日よりも大きな大会で、見えたとしたら、どれほど──。
「──夢なんかじゃないよ」
聞こえてきた声に、3人で顔を見合せた。そして、声の発信源を辿っていく。
……芹だ。
芹は力強く、何か重大なことを決意するかのように、地面を見つめていた。
試合の直後は誰よりもその喜びを表現していたのに、帰り道ではなぜか一言も喋っていない。ポツポツと今日のことを話す私たちの少し後ろを、ただ黙って歩いていたのだ。
私たちはまた3人で顔を見合わせて、揃って芹の方へ視線を集めた。
そんな私たちに向かって、芹は大きく、1歩を踏み出して近づいた。
「どこまでだっていけるよ。全国だって、きっと！」
帰り道の最中、芹が何を考えていたのかは分からない。けれどその時の顔は、まさしく私のよく知る藍田芹香だった。
初めて私に、声をかけてくれたときのような。
私たちはまた顔を見合わせて、今度は思い切り笑った。
芹はラムネ瓶を持つ腕を突き出して言った。
「──だから、約束。このメンバーで、必ず全国へいこう！」
4人で作った小さな円の中心で、ガラスがぶつかり合う不格好な音が鳴った。それが何だかおかしくて、しばらくの沈黙の後、みんなで一斉に吹き出した。
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ミノ(プロフ) - ちょこれーとさん» 嬉しいコメントをありがとうございます！とっても励みになります！私も遙が好きなんです！これからも気長にお付き合いいただければと思います^^* (2021年6月19日 22時) (
レス) id: 39ed912905 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこれーと(プロフ) - この小説めっちゃ好きです！Free！の映画も楽しみですね。笑 ちなみに、私はハルちゃんと郁弥推しです！これからも作者様のペースで頑張ってください！応援してます(*'▽') (2021年6月19日 22時) (レス) id: 64be1a2e2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ミノ | 作成日時：2021年5月17日 21時
