もう一度、最後の。【としみつ】

Day 17 ページ17

ﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ




夜の10時前くらいだろうか。


突然の来客だった。







ｶﾞﾁｬｯ





と「はー、って、A！？どうしたんだよ」

「こんばんは」





ひひっと笑うと、Aは手に持っていたデカめのビニール袋を顔の前に持ってきて







「夜ご飯。食べた？」

と「いや、」

「良かった、ピザ買ってきた。一緒に食べない？」







仕事終わりだったんだろうか、服はいつもよりビシッと着ていて顔に疲れが出ているようにも見える。








と「あっ、サンキュ。」








そう言ってAを中まで通した。






ゼロからスタートして一週間がたった。


案の定お互い都合が合わなくてなかなか会えないけれど、仕事終わりはたまに顔を出しにくる。








「あー、疲れた」

と「おつかれ」







目の前に缶ビールを出すと、気が利くねぇと早速空けていた。








「あ、まって。ちょっと仕事先から電話来た。先食べてて」







廊下に出ていくのを見送って、先食べててと言われたものの悪い気がしてじっと待つことにした。






ふと、隣に置かれたAのカバンが目に入った。



勝手に見るのはもちろんダメだけれど、1番上にちょこんと乗っかっていたスケジュール帳に手を伸ばした。




7月のところに付箋が貼ってあり、そこをめくるとびっしりと予定が書かれていた。





4日、5日、打ち合わせ

15日〜23日 撮影 と書かれていた日付の横には1日空けて星マークがついていた。


多分これはAが担当する日なんだろう。




撮影期間が終われば休みだよ、とは言っていたけれど全然忙しいじゃねぇか。そう思って元の場所に戻した。







「ごめん、食べてて良かったのに」

と「いや、それは」

「いい子」






そう言ってAは黙々と食べ始めた。



身長は俺と変わりがなくて、体型はほっそり。の割には胸はでけぇし、よく食べる。






「あ、そういや曲聴いた」

と「感想聞かせて」

「うーん、感動した」

と「そんだけ？」

「それしか出てこないくらい感動した」

と「ありがと」

「良かったよ、おめでとう」








Aはニコッと笑ってピザを片手に持ったままビールを飲み干した。









と「A」

「ん？」

と「好きだよ」

「何、いきなり」

と「いや、理由は別に」

「私も好きだけど」

と「ね、1回ギュッてして」

「ええー」

と「ね、1回」

「はいはい、ぎゅーっと」









まだ俺らは始まったばかり

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