#39 ページ39
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─Side S─
Aを構わなくなったエイちゃんは
その後 女子から告白されることが
多くなったみたいだ。
直接見たわけじゃないけど
教室や廊下で彼のことを話す声は
日に日に増えている。
ぜんぶ、断ってるみたいだけど。
エイちゃんが離れていくのを
Aは止めなかった。
……止められないか。
何があったのかは知らない。
でも、二人の間に
諍いがあったのは明らかだ。
(両想いなのに……)
心がすれ違ってるだけなのに。
以前、教室で俺がエイちゃんに
相談したことが尾を引いているのかも。
そのせいで、二人は仲違いしてしまったのかも。
だとしたら元凶は俺で、
その俺だけが幸せになるのは……
それは、出来ない。
好きな人のために
本心を閉じ込め、傷つき続ける二人を
見ているだけなのは辛い。
……どうにか出来ないかな。
*
「エイちゃん」
休み時間、俺は彼の席に向かった。
突っ伏していたけれど寝てはいないと踏んで。
「放課後、屋上に来て」
「えー、お前まで俺に告白してくんの?」
と、笑ったエイちゃんに正直ホッとした。
いつも通りの、エイちゃんで。
「なわけねーだろ!」
俺はそう抗議しておき、
「とにかく来て」
と、念を押す。
「わかったよ」
彼は首を縦に振ってくれた─────。
*
「Aちゃん!」
購買から教室に戻る途中、
千夏ちゃんに呼び止められた。
「あ、あのさ、相談したいことがあるの」
何だろう。
そらとは上手くいっているようだけれど
見えない所で何か起こっているのかな。
「私で良ければ何でも聞くよ」
少し不安に思いながらも頷くと
彼女は、ぱっ、と明るい表情になった。
「ありがとう!
用事が済んだらすぐ行くから
放課後、教室で待っててくれる?」
「うん、わかった」
私は頷き、彼女と一緒に教室へ戻った。
そこに珍しくエイジはいなかった。
そらもいないので、たぶん何処かで
二人で食べているんだろう。
「……」
主のいない彼の机に触れてみた。
今のエイジと同じように、冷たい。
どうして、こうなってしまったんだろう。
私がどれだけ望んでも
もう以前のようには戻れないのかな。
────だったら……
諦めるから、前みたいに彼と話したい。
笑い合いたい。
そうは言っても……。
“諦める”って思うだけなら簡単だけど
実際には全然出来そうにない。
想いはきっと、消えてはくれない。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 1時