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それから一週間が経過した。
……想いは、消せないまま。
*
「おはよ」
眠そうなエイジの声が降ってきて
私は靴を履き替えながら
「おはよ」と返す。
「そういえば、聞いた？」
「何を？」
廊下を並んで歩き教室に向かう途中、
次に発せられた彼の言葉に私は驚愕する。
「そら、彼女と別れたらしいよ」
言葉を失った。
……一週間前の出来事が蘇る。
『そんな簡単に千夏ちゃんから
気持ちが離れるわけないよ！
千夏ちゃんなら、きっと大丈夫だから』
『ありがとう。本当に、ありがとう』
彼女は泣きそうな顔で
でも安心したように微笑んでいた。
─────どうして……？
「何ショック受けてんの？ 良かったじゃん」
エイジの言葉に心の奥底が疼いた。
しかし直ぐに蓋をする。
「そんなこと言わないでよ────。
……私は誰かを傷つけてまで
自分が幸せになりたいとは思わない」
彼を非難の眼差しで一瞥し、一人で歩き出すと
「いい加減気付けよ」
そんな声に引き止められた。
「本当に好きなら、最後まで貫けよ。
誰も傷つかない恋なんてないんだよ！」
木霊する、その声。
背中に浴びた言葉たちが
私の心をドロドロ溶かしていく────。
誰も傷つかない恋なんて、ない。
誰も傷つけない恋もないってことだ。
そらを想う私の想いは
エイジのことを傷つける。
『誰か』を想うそらの想いは
彼女のことを傷つける。
私を想ってくれるエイジの想いは
一週間前彼に告白した、
“あの子”のことを傷つける。
自覚した途端、射られた胸が痛み出す。
─────何も言い返せなかった。
「……っ」
何事かと集まってきた生徒たちや
エイジから逃れるように走り出す。
無我夢中で走って、辿り着いた先は屋上だった。
*
柵を握り締めたまま崩れるように座り込む。
(何やってるの、私……)
一週間前、
私の言葉は千夏ちゃんを
中途半端に期待させただけだった。
だからたぶん、
そらから別れを切り出されたとき
余計に傷つけてしまっただろう。
二人が別れたと聞いて
私は喜ぶことも悲しむことも
そのどちらも出来ずに
エイジに正論を突きつけられて
逃げてきただけ……。
今の私に、
誰かを好きになる資格なんてない。
誰かに好かれる資格なんて、
もっとない─────。
────と。
「こんな所でどうしたの？」
静かな屋上にそんな声が響いた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年11月25日 1時
