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第21話雨垂れイケメン② ページ24

1週間の合宿が終わり、私は夏の暑さに茹でられているところだった。
「しかも雨降ってるし」
そう、聞けばここ最近雨がちょくちょく降っているらしい。
「あー愛猫ネコードギアの散歩にでも行こうか……」

ネコードギア、雨、散歩。
この三語が頭の中でまるでアリの隊列のようにぞろぞろと歩き出した。

"だあら！雨の日は俺もここに来るっつってんだよアァン！？"

「ア、ア、アリえなーーい！！」
___
約束を忘れてしまうなんてアリえない！！いやでもちょっと待って。あのヤンキー君が律儀に約束守るのもアリえなくない？？アリえるかな？

「っはぁ…はぁ………！！」

雨にビッヂョリ濡れていたのは神田君だった。

「神田君……！」
「お前…」
「神田君！ごめん！私……」
「んなことよりも」
腕が伸びてくる。殺される……！

「おら」
あれっ？…
「か、かんだ…」
「うるせえ」
気付くと私は公園に備え付けられていた屋根の下に引っ張られていた。

「お前ビッヂヂョビッッデョヂョじゃねえか」
「あ、ほんとだ……」
そういえば恐怖に我を忘れて走っていたみたいだ。
「あの…神田君。ごめん、ここ1週間部活の合宿に行ってて……」
「知ってる」
「えッ」
「春人メイとかいうやつから聞いた」
メイちゃんナイス！！！
「そっかぁ～～……」

「ア、アリの調子はどう？」
「……だめだ。前と同じで元気がまったく無ぇ」
う～んなんでだろう…
「砂糖がアリすぎて死ぬなんてことは無いと思うんだけど……やっぱり雨のせいかな？」
「チッ……だったら俺が来る前のアリだって雨に降られてただろクソ」
「あっそうだよね！ごめん！はは…」
危ない危ない。この人はヤンキーだった。

「お前もう帰れよ……風邪引くだろ」
「えっ？」
「……」

だめだ。全然分からない。……だって私が見た、同級生に向かってカツアゲをしているような神田君と全然結びつかない。

「……ごめん。気を悪くしたなら無視してもらってもいいんだけど……何で、カツアゲなんかしてたの」
「ハァ！？」
「っ…私、あれはいけないと思う」
怖い。でも、間違っているから。
「……親父がヤクザの下っ端なんだよ」
「…うん」
「いつもボコボコにされてた。俺も……何かしたかった。だから、親父の真似した」
そうだった、のか。
「バイトじゃダメ……なの？」

「は？バイト？」
「うん。神田君なら引っ越しとか…」

「おい待て、

バイトって何だ？」

こうして神田君のバイト人生はアリから始まるのだった。