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暫くして、悟が持ってきた粥を食う。
意外に美味くて『これホントにお前が作ったのか』と思わず聞くと、悟は笑って「当たり前でしょ?」と返す。
あっという間に食べ終わって、睡魔に負けそうになってうつらうつらしていると。
「じゃあ、寝てて。僕ちょっと呼ばれちゃったから行ってくる。良い子にしててね」
そうやっていつも通り子供扱いをする悟は、手を振って私から離れる。
でもそれを私は、奴の裾を掴んで阻止していた。
『…行くな。…傍にいろ』
咄嗟に出た言葉を理解するのにやけに時間がかかった。突然の事に、さすがの悟も、目隠しで隠れて見えないが目を丸くして驚いているように見える。
『…ち、違うコレは…何でもない、忘れてくれ』
羞恥心で死にそうだった。なんで私こんな事を…!
『呼ばれたんだろ、…行けよ』
顔を見られたくなくて、布団の中に潜り込む。顔が熱い。…けどこれはきっと、熱があるせい。
そうだ、熱に浮かされたせいだ。普段の私ならばこんなこと言わない。そう何度も心の中で言い訳を繰り返す。
「…いいよ」
『…え』
何処までも優しい声がした。
それはまるで、花のような。
「いいよ。ずっと傍にいてあげる。だから隠れないでよ」
布団を剥ぎ取って、悟はいつの間にか目隠しを取っていて、微笑んで、宝石のような瞳で私を見下ろした。
「寂しがり屋なんだね、Aは」
『…違う』
「隠すなよ。照れちゃって、可愛い」
とろけるような台詞を、ポンポンと吐き出す悟は、不意に前髪をかきあげる。顕になった悟の白い額に不覚にもドキリと胸が高鳴った。
そして悟はそのまま額をこつんと突き合わせた。
『……!?』
目の前に広がる端正な顔。高鳴るどころじゃない心臓はドッドッドッと心拍数を上げていく。
「熱、また上がっちゃったね」
『…誰のせいだと…!』
「自分が巻いた種だよ?」
クスクスと笑う悟は、私の掌を優しく握った。
「手、冷たい。あっためてあげる。
知ってた?手が冷たい人って、心は暖かいんだって」
『て事は手が暖かいお前の心は冷たいのか。迷信も当たるもんだな』
「酷っ!」
戯言も、絶えずずっと付き合ってくれる悟はなんだかんだ良い奴なのだと思う。
『…私が眠るまで、手、握っててくれるか』
「勿論。寧ろ起きるまで離す気ないよ」
『…そ、か』
いよいよ限界だった睡魔に抵抗する術もなくそのまま重い瞼を下ろす。
おやすみ、と声がして、小さくリップ音がして、額に微かな感触がした。
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グミ(プロフ) - みーこ【サブ】さん» 出来ますよ!いえいえこちらこそ何度もリクエストありがとうございますー! (2021年1月8日 15時) (レス) id: 763fbac217 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ【サブ】 - リクエストで、熱が出ちゃったら、ってお願いできますか??何度もすいません! (2021年1月7日 19時) (レス) id: fd540dc306 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ【サブ】 - グミさん» リクエスト、応えてくださってありがとうございます!五条先生のヤンデレ感が加速していて、すごくおもしろかったです(笑)更新頑張ってください! (2021年1月4日 8時) (レス) id: fd540dc306 (このIDを非表示/違反報告)
みどりちゃ。(プロフ) - 五条先生がヤンデレってトコが性癖にグサッと刺さって、いつも楽しみです!更新頑張って下さい! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 2c92b3b212 (このIDを非表示/違反報告)
グミ(プロフ) - みーこ【サブ】さん» リクエストありがとうございますー!全然できますよ!是非作らせていただきますー! (2021年1月1日 12時) (レス) id: 763fbac217 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:グミ | 作成日時:2020年12月3日 7時