第86話 ページ8
「そんな顔しないで。別に死ぬわけじゃないんだから。見た目は今にも死にそうな感じだけどさ」
わかっている。頭ではわかっていながらも、私は笑顔を作る気にはなれなかった。上手く言い表せないけど、気持ちが晴れない。
そんな内心を悟ったのか、努めて雰囲気を変え「ねえ」と話を振ってきた。
「ふたりは今、幸せ?」
「唐突ですねィ」
その通り、実に急転換。と思う間に総悟が答えを返す。
「刀振り回して生きる奴の辞書に幸せなんて文字はねェさ。知ってんだろ。まァ、アンタが味わった地獄に比べりゃ恵まれてるほうだとは思うが」
「いや言い方……でも、そうだね。何気ない毎日が送れている今が一番幸せなのかもしれない」
ミライはふっと笑った。
「それでいいと思うよ」
言いながらげほげほと咳き込む。背中を摩ってやると、辛そうながらも笑っていようとする彼女の瞳が私を捉えた。
「A。好きなものすべてを大切にして、自分らしく生きて。せっかくこの世界にいるんだもん。今いる場所で目一杯楽しく暮らさなくちゃ勿体ないよ」
「……うん。そうだね」
「それから、総悟。会えて嬉しかったよ。健闘を祈ってる」
「ったく、おめェには全部お見通しだから叶わねェや。……言われるまでもねェさ。必ず手に入れてみせまさァ」
何のことだろう。私にはさっぱりだけど、ふたりしか知らない話でもしてたのかな。
でもわざわざ追及することではなさそうだ。
「私、上手くやっていけるかな」
「大丈夫だよ。__二人なら、きっと」
ふたり。
それって、つまり__
「じゃあね」
最後に私の手を優しく握って微笑むと、ミライは光に溶けて消えていった。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
236人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:yunami☆彡 | 作成日時:2022年5月6日 12時