検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:30,865 hit

ページ ページ10

約束、その言葉を聞いた瞬間、ずきりと鋭い痛みが頭に走る。
痛い。痛い。

「あの日も今日と同じくらい暑かったかな」

「っ...なん、の、話、して...」

痛む頭のせいで上手く喋る事が出来ない。

「だから、約束したんだよ。 あの日あの荘園で。 いつか君と荘園を出て、その時は白いウエディングドレスを着せてあげるって」

「あ...」

ぱちりぱちりとピースがはまっていく。
思い出した。

「あ、思い出してくれた?」

背筋に冷たいものが走る。
この人のこの顔が、私は大嫌いだった。

「良かった。 思い出さなかったらどうしようかと思ったよ」

嫌だ。どうして。

「ふふ、泣きそうになっちゃって可愛いね」

こわい。こわい。
目の前にいるこの人が、こわい。

「ね、僕言ったでしょ」

逃げなきゃ。
その人の言葉の続きを聞く前に逃げなければ、という一心で駆け出す。
はずだった。

「どこ行くの」

逃げようとする私の手首を掴むその人の声は優しくも地を這うようで、恐ろしかった。

「駄目だよ。逃がさない」

嫌だ。嫌だ。
私は、もう。
もがけ。もがけ。

「ああ、もう。 暴れないの」

首にちくりと何が刺さった感覚。

「ちょっと大人しくしててね」

意識が遠ざかっていく。

「......し......る......ぼ......」

何を言っているのか聞き取れない。
ただ分かるのは、また私はあの人から逃げられなかったという事だけだ。

無題→←約束 探鉱者



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (70 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
157人がお気に入り
設定タグ:第五人格 , IdentityV , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

うめぼし - あぁ…好きです… (2022年2月10日 0時) (レス) @page19 id: 6957d2b079 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 杠さん» コメントありがとうございます。小一時間踊り狂えるほど嬉しいです。ぜひ引き込まれてください (2019年12月8日 11時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うわ素敵な文章かかれますね…引き込まれちゃいそうです… (2019年11月2日 10時) (レス) id: 28dffd500b (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - ぽぴらさん» 温かいコメントありがとうございます...!なるべく早く更新できるよう頑張ります〜 (2019年7月27日 2時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - ヒーーーッ好きです……悶えました……更新待ってます〜 (2019年7月8日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あんず | 作成日時:2019年6月10日 19時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。