ページ ページ8
「それで、えっと、話って…?」
自室に連れ込み数分経った辺りで痺れを切らしたのかこちらに問うてくる。
「ああ、相談したい事があってな」
実は……とイライとイソップに相談したときと同じように話す。
「ち、ちょっと待って! え、ということは今もどきどきしてるの…?」
頬を真っ赤に染めてこちらをじっと見てくるA。
その表情にぐらりと何かがぐらつく。
「そうだな、お前の近くにいるときはずっとだ」
実際に言葉にすると無性に気恥ずかしく、ただでさえ五月蠅い心臓がさらに五月蝿くなる。
「ナワーブがそこまで馬鹿だとは思わなかった」
口を開いたと思えば急に罵倒され少しむっとする。
「おまっ……!?」
誰が馬鹿だ、と紡ごうとした唇を塞がれた。
Aの唇で。
「馬鹿、鈍感、それでも好き」
それだけ言って逃げるように部屋から出ていくAの後ろ姿を黙ってみていることしか出来なかった俺の胸に『好き』という二文字がすとんと落ちる。
感触の残る唇を指でなぞりながら考える。
未だ鳴り止まぬ心臓。
自分でもわかるほどに熱くなっている頬。
こんなの、認めるしかなかった。
この感情の名前自体は昔本で読んだ事があるため分かってはいた。
ただ、認めたくなかっただけ。
自覚して、意識して、あの関係を崩したくなかった俺のわがまま。
「くそっ……」
無駄に広い廊下を走り回る。
見つけた。
「A!」
肩をびくりと震わせゆっくりと振り向くA。
「聞いてくれ! 俺は!お前が!Aのことが!」
伝えてやろう。
大好きだと。愛していると。
今までの気持ちを。
157人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うめぼし - あぁ…好きです… (2022年2月10日 0時) (レス) @page19 id: 6957d2b079 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 杠さん» コメントありがとうございます。小一時間踊り狂えるほど嬉しいです。ぜひ引き込まれてください (2019年12月8日 11時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
杠(プロフ) - うわ素敵な文章かかれますね…引き込まれちゃいそうです… (2019年11月2日 10時) (レス) id: 28dffd500b (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - ぽぴらさん» 温かいコメントありがとうございます...!なるべく早く更新できるよう頑張ります〜 (2019年7月27日 2時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - ヒーーーッ好きです……悶えました……更新待ってます〜 (2019年7月8日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あんず | 作成日時:2019年6月10日 19時