確認 納棺師 ページ6
「カール君、カール君、怖い、怖いよ」
「大丈夫ですよ。 Aさんには僕がいますからね。 大丈夫、大丈夫」
爪を立てながら背中にしがみつき嘆く彼女。
爪を立てられるのは少し痛いが、愛しい彼女から与えられているのだと思えば何ともない。
所詮彼女は愛され願望が強い、というのだろうか。
誰かに愛されていないと不安で仕方がないらしい。
しかしそんなくせして人見知りで周りに馴染めない。
そして独りになって勝手に病んで。悪循環。
荘園に来た当初もそんな感じで、他のサバイバーもハンターも、彼女をどう扱えばいいのか分からなかったらしい。
そんな状況の中荘園に訪れた僕という存在。
都合がいい、とでもいうかのように彼女と仲良くしてやって、と押し付けられた時は腹が立ったが今となっては凄く有り難い。
だって泣いて愛を乞う彼女の姿はこんなにも惨めで、それでいて可愛らしい。
可哀想に。
「何も考えたくないよ。 辛いよ」
「大丈夫ですよ。 Aさんは僕の事だけを考えればいいんです」
本当は彼女がこんなにも可愛いことを他の人は誰も知らないだなんて。
可哀想に。
「もう嫌だよ。 死にたいよ」
「貴方がいないと僕も生きていけませんよ」
甘い言葉を紡いでやれば簡単に信じ込んじゃって。
愚かで、分かりやすくて、凄く、凄く愛おしい。
「カール君、私のこと好き?」
「はい、愛してますよ」
この時間を終える合図である愛しているという言葉。
心配なんてしなくても僕はずっと、貴方だけを愛しているというのに。
何時でも甘い言葉を紡いであげる。
ずっと貴方が僕だけを見て、僕以外には心を開かないように。
一生僕の棺から出られなくなるように。
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うめぼし - あぁ…好きです… (2022年2月10日 0時) (レス) @page19 id: 6957d2b079 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 杠さん» コメントありがとうございます。小一時間踊り狂えるほど嬉しいです。ぜひ引き込まれてください (2019年12月8日 11時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
杠(プロフ) - うわ素敵な文章かかれますね…引き込まれちゃいそうです… (2019年11月2日 10時) (レス) id: 28dffd500b (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - ぽぴらさん» 温かいコメントありがとうございます...!なるべく早く更新できるよう頑張ります〜 (2019年7月27日 2時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - ヒーーーッ好きです……悶えました……更新待ってます〜 (2019年7月8日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんず | 作成日時:2019年6月10日 19時