もしもの話 納棺師 ページ16
「ねえ、イソップくん」
「なんですか」
話し掛けると化粧箱を漁っていた手を止めこちらを見てくれるイソップくん。
こういう律儀な所大好き。
「もし私が死んだらその時は納棺してくれる?」
なんとなく気になっていた事だった。
いつも私の横にいて、私が言うことは何でも肯定してくれた彼に。
「絶対に嫌です」
眉間に皺を寄せ、きっぱりとそれだけ言ってまた化粧箱を漁りだすイソップくんに少しむっとする。
納棺したくない程に私は魅力がないのか!なんて。
「いいですか」
再び手を止めつかつかとこちらに歩み寄る。
あ、その顔好き。
見惚れていると優しく頬を包まれ、一つ間違えば唇が触れてしまいそうなほどに顔を近付けられる。
「貴女の死というのは同時に僕の死でもあるんです」
イソップくんが言葉を発する度に熱い息がかかって恥ずかしい。
いっその事この熱で溶けてしまいたいくらいだ。
「貴女が一人で死んで僕を置いていくなんて許しませんから」
頬を包んでいる手に力がこもり少し痛い。
「...イソップくん痛いよ」
「死ぬ時は一緒に死んでください。 あ、でも貴女を僕以外の人が納棺するのは絶対に嫌なので、誰にも見つからない場所で二人きりで死にましょうね」
見事に私の言葉を無視し、それはそれは良い笑顔でそう言ってのけたイソップくん。
それにしてもなかなかに重いなこの男。
いや、こういう所も好きだけど。
「...まだ、死なないからね」
そう告げると分かってます、と言うが不服そうな顔して本当に分かっているのかこの男は。
まあ別にイソップくんと一緒なら今すぐに死んでも構わないけれど。
...なんてね。
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うめぼし - あぁ…好きです… (2022年2月10日 0時) (レス) @page19 id: 6957d2b079 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 杠さん» コメントありがとうございます。小一時間踊り狂えるほど嬉しいです。ぜひ引き込まれてください (2019年12月8日 11時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
杠(プロフ) - うわ素敵な文章かかれますね…引き込まれちゃいそうです… (2019年11月2日 10時) (レス) id: 28dffd500b (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - ぽぴらさん» 温かいコメントありがとうございます...!なるべく早く更新できるよう頑張ります〜 (2019年7月27日 2時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - ヒーーーッ好きです……悶えました……更新待ってます〜 (2019年7月8日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あんず | 作成日時:2019年6月10日 19時