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数日後、一緒に学校に行かないか、と彼女に誘われた。
助けを求めなかった事は気に入らないが、それ以上に彼女と一緒に居られる事が嬉しくて。

久しぶりに彼女を迎えに行って、浮かれて手なんか繋いじゃって、幸せだった...はずなのに。

急にするりと手を解かれる。

「ねえ、ノートン。 好きだよ」

くるりとこちらに振り返り、可愛らしく笑ってそう告げてくる彼女に胸が高鳴る。

僕も好きだよ、大好き。
そう告げようと思ったのに。

「だから、さよならしよう」

「...は」

困惑する僕に目もくれず踏切内へと歩を進める彼女。
危ない、戻って来て、僕の隣にいて。
言いたい事はあるのに、口はぱくぱくと動くだけで上手く言葉を紡ぐ事ができない。
引き留めようとする手は空を切るだけ。

カンカンと警報機が鳴り響き、次第に降りる遮断機。
境界線を引かれたみたいで気持ちが悪かった。
電車が迫る。 電車が、彼女に触れた。

その後の事は、思い出したくもない。



君の事を考えた夜、また、夢を見た。

白く細い手首に僕とお揃いのブレスレットをつけている君が、踏切内でこちらに手招きをしている。
そこまではいつもと変わらない。
違うのは足が動くことだ。

嬉しい。
これでようやく君の元へ行ける。
駆け寄って抱きしめる。
ひんやりとして心地が良い。

鳴り響く警報機も、僕達を隔離する遮断機も、五月蝿い蝉の声もなにも気にならない。
君の声だけ聞いて、君の腕の中に隔離されて、君に溺れていたい。

ノートン、と少し掠れた声で囁かれる。
なあに、どうしたの。

電車が僕達に迫る。

__、___。

ああ、そうか。

電車が触れて、僕という存在が壊れていく。

____。

君は全部、知っていたんだね。

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うめぼし - あぁ…好きです… (2022年2月10日 0時) (レス) @page19 id: 6957d2b079 (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - 杠さん» コメントありがとうございます。小一時間踊り狂えるほど嬉しいです。ぜひ引き込まれてください (2019年12月8日 11時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - うわ素敵な文章かかれますね…引き込まれちゃいそうです… (2019年11月2日 10時) (レス) id: 28dffd500b (このIDを非表示/違反報告)
あんず(プロフ) - ぽぴらさん» 温かいコメントありがとうございます...!なるべく早く更新できるよう頑張ります〜 (2019年7月27日 2時) (レス) id: 584fcfefdb (このIDを非表示/違反報告)
ぽぴら(プロフ) - ヒーーーッ好きです……悶えました……更新待ってます〜 (2019年7月8日 23時) (レス) id: 3f5b5addce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あんず | 作成日時:2019年6月10日 19時

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