189話「今の自分」 ページ9
Noside
「さぁ、帰ろう」
と、Aに詰め寄る2人。
「っ…………かっ、かえ、ら、ないっ。」
震える声で絞り出すA。
「なに…？」
低いその声にビクッと体を跳ねらせる。
「昔から意見もしない、子供らしい言動もしないお前が、今更何を、」
「っ俺は、昔の俺じゃない…っ！！」
「っ？！」
スクっと立ち上がり、震える足を押さえつけ、
快斗を庇うように立つ。
「俺は、変わったんだ…っ、変えて、貰ったんだよ。盗一さんと、快斗に。もう昔みたいに受け身でいるのはやめたんだ！！
だからっ、だからこの家の悪口とかっ、
言ってんじゃねぇよ！！！」
震える声を、足を、押さえつけ、
初めて自身の両親に、意見をぶつける。
「何故、そこまで、…執拗に拒否するの？
私達がなにをしたっていうのよ！！！！」
そう、彼等はAを捨てた。
言ってしまえばそれだけなのだ。
前世の親に比べれば与えた恐怖自身は少ないのかもしれない。
それでも、12年間にも渡る育児放棄。
与えられない愛。
「……何をした、とかじゃない。何もしてくれなかった。いつだって知らん顔してた。
俺の両親は世界で唯一、他の誰でもない、
盗一さんと千影さんだよ。」
快斗は、その言葉に、その横顔に、
キュンと痛くなる心臓を、
ギュッと抑えて聞いていた。
「だからあんたらが子供が欲しくたって俺には関係ない。俺はこの危なっかしい兄を置いては
どこにもいかない。」
嗚呼、随分と、
俺は愛されているのかもしれない。と、
自惚れる事を思ってもいいのだろうか。
快斗は心の中で葛藤をする。
「俺がそばに居たいのは快斗だけだ。快斗はいつだって俺を助けてくれた。守ってくれた。快斗がいなければ、………俺は、そんな事、考えたくもない位、嫌だ。あんたらが与えてくれなかったものを全部くれた。
俺の兄さんなんだよ。」
必死に語るその顔を見て、2人は顔を見合わせた。
「そう……、」
伝わってないかもしれない。
そうだ、彼等はいつだって俺の事は考えない。
自分勝手な思考を持った人間だった。
嫌いだ。
頭の中で昔の彼等が叫ぶ。
『アンタなんか、産むんじゃなかった。』
『別にお前なんて要らない。』
『めんどくさい、勝手に死んでくれたらいいのに』
『邪魔くさい、お前のせいで私達の自由が。』
Aにとって、そんな事は、
もうどうだっていいのだ。
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沢 - めっちゃすごいです―ーーー、一気読みしてしまいました！これからのお話も頑張ってください！！応援してます。 (2021年1月5日 11時) (
レス) id: 9cb9dbbd4b (このIDを非表示/違反報告)
美術部 - ヤバイ、一気に読んじゃいました・・・もっと早くにこの作品に出合いたかったけど、読めて最高に嬉しいです！この小説を書いてくれた作者様、本当にありがとうございました！ (2020年8月15日 18時) (レス) id: dfab0f562e (このIDを非表示/違反報告)
とく - 最後まで読ませて頂きました。ひたすらに最高でした。リアルタイム(?)では見れませんでしたけど、この小説見つけられてよかったです！ありがとうございました。 (2020年5月1日 14時) (レス) id: 7ea0d5ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの匿名 - オメガバース…知ってたんですね……めっっちゃ気が合いそう！！(小並感) シリーズ1から読ませていただいてます！素晴らしい語彙力だと思います。その語彙力10分の9ください() (2019年5月26日 19時) (レス) id: 16bc441f1e (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 吸血鬼LOVE♪さん» いざ文字に起こされると恥ずかしいですね…笑笑 でもわざわざコメントありがとうございます！！！自分でも「え、ここでちゅーしていいの？」と自問自答しました笑笑 (2018年10月16日 22時) (レス) id: 8b1dfa966a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作成日時：2018年6月23日 1時
