210話「月が綺麗な夜は」 ページ29
「そうだ、自己紹介がまだだったな。俺は赤井秀一だ。」
と、手を差し出される。
「あ、俺は黒羽Aです。」
知ってるだろうけど…、と思いながら握手をする。
「ふっ」
赤井さんは、何やらツボにハマったのか小さく含み笑いをする。
「えーっと、どうしました？」
「いや、なんでもない。」
そう言って俺の頭をぽんぽんする。
チラリと快斗を横目に見て、快斗の頭もぽんぽんする。
「そんなに警戒しなくたって、取りはしない」
と、笑う。
えーーっと？？なんの話？？
「なっ！！べ、別にそんな心配してねぇし！！」
と、怒る快斗。
頼むからこれ以上快斗を煽らないで…。
後から説教受けるのは俺なんだから！！！
「シュウ！！時間よ！！それじゃあクロバ君、またね。」
と、ジョディ先生がひらひらと手を振る。
「あ、はい。赤井さんも、また。」
赤井さんはジョディ先生に引っ張られつつ、俺達に手を振る。
なんだか、ものすごく…疲れた。
「……帰るぞ。」
快斗はようやく俺から離れて、すたすたと歩き出す。
あ〜〜〜絶対怒ってる…。
ーーーーーーーーー
Noside
「快斗、快斗ってば！！」
いらいらしているのか早足で歩く快斗。
自分が怒らせたと、分かっているから頑張って着いて行ってるが、足の長さには限界があるA。
「待っ、っぶ！！」
急に止まるのだから、Aは快斗の背中にぶつかる。
「っと、快斗…？」
無言で少しゆっくりのペースになる。
なんなんだ…と、少し呆れ顔になるAだったが、これ以上怒らせるのは…と思いこちらも無言で歩き出す。
ふと、Aは顔を上げる。
「あ、月…綺麗。」
そう呟く。
もうすっかり夜だ。月が映えるくらい。
「…そーだな。」
と、快斗が。
「あ、そういえば。…こんなに綺麗に月の輝く夜は、胸の奥に隠した言葉がうっかり零れてくるらしいから、気をつけて。って何かで見たよ。」
そう笑いかける。
不意をつかれた快斗は驚きの表情を見せる。
少し赤い顔を、ふいっと顔を逸らし月明かりから隠す。
「へぇ、胸の奥に隠した言葉が、ねぇ…。」
兄も弟も、どちらも思い当たる節がある為、
お互い顔を逸らす。
「………」
何か、思ったのか、快斗は立ち止まる。
予想外の出来事にAは二歩、三歩、
前へ進み振り返る。
「……………快斗？」
「前にさ、俺の好きな人、聞いたじゃん。」
「…うん。」
「俺の好きな人、お前だよ。A。」
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沢 - めっちゃすごいです―ーーー、一気読みしてしまいました！これからのお話も頑張ってください！！応援してます。 (2021年1月5日 11時) (
レス) id: 9cb9dbbd4b (このIDを非表示/違反報告)
美術部 - ヤバイ、一気に読んじゃいました・・・もっと早くにこの作品に出合いたかったけど、読めて最高に嬉しいです！この小説を書いてくれた作者様、本当にありがとうございました！ (2020年8月15日 18時) (レス) id: dfab0f562e (このIDを非表示/違反報告)
とく - 最後まで読ませて頂きました。ひたすらに最高でした。リアルタイム(?)では見れませんでしたけど、この小説見つけられてよかったです！ありがとうございました。 (2020年5月1日 14時) (レス) id: 7ea0d5ffd3 (このIDを非表示/違反報告)
名無しの匿名 - オメガバース…知ってたんですね……めっっちゃ気が合いそう！！(小並感) シリーズ1から読ませていただいてます！素晴らしい語彙力だと思います。その語彙力10分の9ください() (2019年5月26日 19時) (レス) id: 16bc441f1e (このIDを非表示/違反報告)
楸(プロフ) - 吸血鬼LOVE♪さん» いざ文字に起こされると恥ずかしいですね…笑笑 でもわざわざコメントありがとうございます！！！自分でも「え、ここでちゅーしていいの？」と自問自答しました笑笑 (2018年10月16日 22時) (レス) id: 8b1dfa966a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：楸 | 作成日時：2018年6月23日 1時
