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玄師が運転する店の配達用の軽バンには、車体に大きく店名が書かれている。
その小さな車で、郊外にイチゴを仕入れに向かっていた。
自分たちで摘んだイチゴで苺大福を作ろうと、車内は盛り上がった。
なかばレジャー気分で、2人は鼻歌を歌いながら軽快に車を走らせていたのだ。
山道に差し掛かり、エンジンが弱っている年寄りのバンは、上り坂をゆっくり上って行った。
急なカーブも急ぐことなく、ゆっくり回る。
突如、坂の上から大きなダンプが現れた。
凄いスピードでカーブを曲がってくる。
ダンプの車体が横に揺れ、玄師たちの車線に飛び込んできた。
玄師は急ハンドルを切って避けようとしたが、バンの右端のバンパーをダンプに持っていかれた。
そのままダンプの横腹に車体が激突する。
悲鳴を上げる間もなく、美菜子は扉に叩きつけられーー。
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「おはようございまーす」
真衣は挨拶しながら出勤してきた。
厨房に顔を突き出し、店主にも挨拶する。
「あら玄師さん、凄いクマ。
どうしたんですか」
「ちょっと眠れなくてね」
ミルフィーユを組み上げる手を止めず呟くように話す玄師に、真衣は心配そうな目を向ける。
「大丈夫ですか?
ほんとに元気なさそう」
「1晩くらい、眠らなくても死なないよ」
玄師は真衣に笑ってみせたが、その笑みは力なかった。
真衣は続けて話しかけようとしたが、玄師は顔を背け、ケーキ作りに没頭しようとしている。
彼が無理をして話していると感じ、玄師を1人残して、真衣はそっと店舗に戻った。
「あら、今日は和菓子はないのね」
朝1番に店にやってきた城内弥恵がショーケースを覗き込み、残念そうに呟く。
「申し訳ありません。
今日は洋菓子デーなんです」
和服をしっとりと着こなした弥恵は人差し指を頬にあて、困ったような顔をする。
「手土産に和菓子を持って行こうと思っていたんだけど・・・。
じゃあ、今日はカステラにしておくわ」
「ありがとうございます。
次はきっと、和菓子もご用意しますので」
「そうだ」
弥恵はぽんと手を叩く。
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作者名:井原 x他1人 | 作成日時:2020年6月14日 11時