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……所有物?人生?
この人は何を言ってる?
いきなりそんな条件を突き付けられて、受け入れられるわけがない。
『_______ッ、そんなのッ…』
凜「君に拒否権は無いよ」
『…ッ!』
グッと近付かれ、顎を摘まれた。
私の目と感情の薄い目が合う。
アメジストのような紫の瞳には光が感じられない。
…この人………力づくでも私を手に入れようと言うのか。
…なら打つ手なしだ。
ただの庶民である私が抵抗しても、名家の権力にはあっさり押し潰されるだろう。
それにまた関係もない人達が尾喰の詐欺に巻き込まれるかもしれない。私のせいで。
そして拒否権は無し。
………………。
…腹を括るしかない。
私は顎を摘んでいた尾喰さんの手を降ろした。
『………分かりました。その条件、呑みましょう。貴方達がしたことも一切口外しません。信じられないのなら監視しても構いません』
凜「!」
でも、これだけでは私が圧倒的に不利だ。
そっちがそう言うのなら、私も同じことをしてやる。
『_____________ですが。私からも条件があります。これで取引しませんか』
凜「…取引?」
彼の笑みがようやく崩れた。
…少しだけど動揺している。瞳孔の揺れ方が不安定だから。
『ええ。私が貴方に人生を譲渡する代わりに、貴方は生涯、私の身の安全を確保する。そして詐欺には直接加担させない。これで釣り合いが取れます』
人の身の安全を守ることは容易ではない。しかもそれを一生分だ。
そして尾喰家が私を狙っていたのは稼業の為。
それに直接的な加担をしないとなると、ダメージが大きいだろう。
そう考えたらフェアになる筈だ。
…そして、ここで更に押す。
私は尾喰さんの両手を掴み、下から見上げるように睨めつけた。
『___________もし守れなければ…私は腹を切って死にます。本気です』
これは脅迫だ。だけど尾喰さんを頷かせるには十分。
この人は私の価値をかなり高く踏んでいるようだから。
少しの静寂が流れたあと、
凜「………やっぱり君を買ってよかった。
…分かったよ。その取引を飲もう。」
そうニッコリ笑った後、彼は私の身体をふわりと包むように抱きしめてきた。
『…!?』
凜「よろしくね。今日からは僕とずっと一緒だ」
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作者名:サナ | 作成日時:2022年1月8日 22時