拾われた女【賭ケグルイ】【約ネバ】 (ページ36)

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凜「これ、何か分かる？」

とある部屋に入るなり、凜からある物を渡された。

私はそれをまじまじと見つめる。

『＂S＂……？』

票によく似たチップだ。表には大きく＂S＂とアルファベットが書かれている。

…ふむふむ、もしかしたらこれは_________

『偽票…？』

凜「流石にそんな事はしないよ？」

『冗談ですよ。

…恐らくですが疑似通貨の類ですよね。これで票の買収でも図るつもりですか？』

凜「流石、話が早くて助かるよ」

凜は満足そうに微笑んで私の頭を軽く撫でた。

…凜さん、距離が近いです

凜「名は＂スカムコイン＂。

君の言った通り、これは疑似通貨だよ。
選挙戦に興味のない生徒から、これを使って票を買収するのさ。

でもこれはただの疑似通貨ではない」

『………これも「詐欺」の一種ですか？』

凜「その通り。票を集めるだけ集めてトンズラする。
生徒に換金はさせないし、票も返さない」

なるほど、これが詐欺……

でも

『でも、票の買収や譲渡は確か禁止だったはずでは…？』

そう、票のやり取りはギャンブルのみによって成立する。選挙管理委員長の黄泉月さんがそう言ったのだ。

買収どころか、失格になって敗退してしまうのでは…？

凜「フフッ、普通はそう思うよね。

でも逆に言うと、ギャンブルさえ(・・・・・・・)していれば問題ないんだよ。

ただのじゃんけんでも、票を賭けていればギャンブルになるでしょ？

スカムコインでもそのシステムを利用すればいい」

『…！』

…あぁ、なるほど

つまりギャンブルさえしていれば、買収や譲渡も事実上可能になる。

スカムコインを使って買収を図ることも、ルールには反しなくなる。(それでもかなりグレーゾーンではあるが)

…思わぬ抜け穴だ。それに気付いた凜も凄いが。