【うた☆プリ】たとえどんなに……【HE★VENS】

＊月の下で ページ27

A「はあ……はあ……」


寮から出て、少し離れた場所。
一番逃げちゃダメなときに、逃げ出してしまった。

何やってるんだろ……
原因は私……私がはっきりしないから……
なのに、ここで逃げたら……

わかっていても、とてもじゃないけどあの場に戻れそうもない。
そうしてぐるぐると考えていると、目から大粒の涙が溢れてきた。
なんで……私が泣くの……！！


「A……？」


少し乱暴に涙をぬぐっていると、聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
慌ててそちらを振り向くと、そこにいたのは……


A「シオン……？なんで……」

シオン「あの一件から、どうにも気が晴れん……白い月の下で、ゆっくりと考える時間が欲しかった」


……そう言えば、皆が言い合ってる中、シオンの姿がなかった。
頭の中ぐちゃぐちゃで、気づかなかったけど……
シオンも、一人で考えたかったんだ……


シオン「泣いていたのか？」

A「へっ？な、泣いてないよ！！」

シオン「ならば何故、頬が濡れている？」

A「顔、洗ったからじゃないかな？ちゃんと拭いたのにな……」


なんて無理矢理な誤魔化し方だろう。
顔洗ったからって、拭いたら普通、濡れてないよね……
一人そんなことを考えていると、不意に温かい何かに包まれた。

シオンに、抱きしめられてる……？


シオン「そなたの涙は、初めて見るな……」

A「へっ？だ、だから、泣いてなんか……」

シオン「嘘をつくな。天草にはわかる。今まで感じたことのなかった、そなたの悲しい波動が……」


……ちょっと言い方が浮世離れしてるのが気になるけど、案の定ばれてる。
そりゃ、あんな嘘に引っかかる人の方が少ないよね。
恥ずかしくなってきた……


シオン「その涙は、HE★VENSを離れることへの寂しさか？それとも……何か別のものか？」

A「……半分は、寂しいからとか、ケンカしてる皆が、見ていられなくてかな……でも……もう半分は……違うかも」

シオン「ならば、何がそなたをそこまで悲しませている？」


シオンの言葉に、私は何も言えなかった。
でも……黙ってるだけじゃダメなのも、わかってる。
言わなきゃ……話さなきゃ……
何も決められないままでも、とにかく話さなきゃ……

せめて、決められない理由だけでも……


A「シオン、戻ろうか……シオンの質問にも、皆を交えてちゃんと答えるから……」


そう言って、私とシオンは、もう一度寮へと戻った。




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