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車から降りて群衆に紛れる。
きっともう二度と来ることはない世界。
事実その一度きりしか、中学の間誘われなかった。
偶然に連れて行かれたその集まりで、私はその男を見つけた。
見つけた、という言い方はおかしいのかもしれない。
誰もがその男を見ていたから。
私だけではなく、そこにいる全ての人間がその男の行動を見つめていた。
私とは生きる世界がまったく違うその人は、とても冷たく鋭い瞳で、綺麗な顔に影を落とす、複雑な魅力を纏う男だった。
私は高校生になった。
『なあ、あんた俺と付き合わねえ?』
入学して1週間目の渡り廊下で、すれ違いざまに突然腕を掴まれてそう聞かれた。
何かの間違いではないだろうかと本気で思い、辺りを見回していると、その男が掴んでいた腕を少し引く。
『大事にしてやる』
生まれて初めて経験する、告白まがいの出来事に私の頭は完全に停止した。
昼休みの渡り廊下は、大勢の生徒が行き交っている。
そんな中でのこの出来事に、大半の生徒が足を止めて、私の腕をガッシリと掴む男を交互に見ている。
『1年?』
軽いのか、そうでもないのかわからない口調で聞かれ、思わず頷くと掴まれていた腕を離された。
『次、会うまでに考えとけよ』
簡単にそう言ってその男は去っていった。
このとき私は、1人で歩いていたことを心の底から後悔した。とはいっても、一緒に歩く相手がいるわけでもない。
痛いくらいの好奇の視線に心拍数が上昇して、顔が赤くなるのがわかった。
渡り廊下を俯いたまま走り去り、教室へと駆け込んだ。
誰?なぜ?嫌がらせ?
どう考えてもそれしか思い浮かばず、自分の席に座りながら、次に会うことがないように心で祈った。
それなのに、その願いは呆気なく壊されることになる。
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作者名:るう | 作成日時:2018年9月13日 20時