だから、終止符を打つ 五 ページ45
「……真逆」
あまりに聡すぎて孤独なわたしの上司は、その一言でこれから何が起こるのか、全て悟ったらしかった。
アンドレ・ジイドが求めるもの。
そして、
誰が利用されて、誰が最後に何を得するのか。
「……全ては、計画されていたのか」
ぽつりと呟いて、呆然とした表情で立ち上がった太宰幹部が、静かにわたしを見下ろした。
ポートマフィアの利のために、何でもするのが首領という存在だ。合理的な最適解は、何時も誰かが『尊い犠牲』となって、組織全体に利益を齎す。
……元から、わたしはあなたに振られなくてはならない存在なのだと、解っていた。
そして、わたしでは決して孤独なあなたを救済することなんて出来ないことも。
別離は決定していたのに、わたしは何でまだ足掻こうとするんだろう。太宰幹部を手放したくないと、心の奥が叫ぶんだろう。
もう、判ってるんでしょう、A?
「お願い、早く行って……大切なものを取り零さないで!」
それを聞いた太宰幹部が、ぐっと表情を引き締める。
彼はそしてそのまま、飛び出すように医務室を出ていった。
____そしてわたしは、身支度を整えると再び捕虜室に戻った。
……既に彼はそこに居て、椅子に座って待っていた。
わたしは座らず、ただそこにいる『敵』に云う。
「多分あなたは一つ、勘違いなさっています。
わたしはその勘違いを正しにここに来た」
彼は黙ってわたしを見て、続きを促した。
「わたしはあの女警部に復讐なんて望んでいません。義兄を殺したのは彼女でも、わたしは彼女に殺されていないからです」
「……何だって?」
目を見張った『敵』に、わたしは銃を突きつけた。
「わたしが復讐を誓ったのはあの女ではない。
“生まれた時”から変わらず、“わたし自身”です」
わたしは罪を犯したから。
もう償うことが出来ないその罪を、わたしはわたしに復讐することで、昇華する。
「わたしはポートマフィアで生き続けることで、“わたし”に復讐をするんです。
あなたにも謝らなくちゃいけませんね。義兄に関わったばかりに事件に巻き込まれた」
「……私は好きで彼を取材していただけだよ」
『敵』は微笑んで、目の前の銃口を見つめる。
わたしは目を伏せ、撃鉄を起こした。
「……あなたがお兄ちゃんの最後の友人で良かった。
さようなら、記者さん」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時