血と闇のカーテンコール 七 ページ30
「……ええ」
わたしがここに来た理由は至極単純だ。
親を失い、孤児になったところを紅葉先生と森医師……今の首領に『相手の動作を鮮明に見る異能』……つまり、
『相手の動作がスローモーションに見える異能』を買われて拾われた。
おかげでわたしはそれなりに体術に秀でている、と思っている。
とはいえそれでも異能者相手では圧倒的に不利。ならば代わりの効かないものになろう、と行動心理学を学んだ、それだけのこと。
……しかし、その説明では太宰幹部を満足させられなかったようだ。
「本当にそうかい? ……確かに君がここに来た理由はそうなのかもしれないが、留まる理由は?
マフィアを抜けるのは難しいけど、不可能なわけではないだろう?」
「はあ。……それで?」
否定しないんだねぇ、と太宰幹部は目を細めた。
一体何が云いたいのかと身構えていると、彼は一言、「“ヒント”を貰いに来たのだよ」と答える。
「君がここに留まる理由を教えて」
成程、そう来たか、とわたしは手にしていた資料を机の上に置き直した。
嗚呼、矢張り彼は凄まじい。もうここまで来たのか。
「よくある話です____復讐ですよ」
……ポートマフィアは、日本の裏社会で暴虐の限りを尽くす大組織だ。わたしが目的を果たすにおいて、完璧に条件を満たしている。
だからこそ、わたしはここに身を置いている。
そこに二つ違いの師……紅葉先生への恩や、わたしの力を買って下さっている
「復讐、ね。……それはいったい誰にだい?」
「これ以上は云えません。あまりにも大きなヒントになってしまいますから」
にっこりと微笑んで、わたしは再び資料を手にする。
太宰幹部は暫く黙り込んだ後、「そう」と呟いて立ち上がると、艶めいた笑みを浮かべた。
色彩の喪われた双眸。思わず眉根を寄せた。
「Aさん、最後にもう一つ」
「質問ですか?」
「君は“この件”については嘘を吐かないと云ったね?」
「ええ」
それでは『約束』が
「君……お兄さんって、居る?」
……その問いに____わたしは、笑った。
笑って、答えた。
「居ませんよ」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時