血と闇のカーテンコール 三 ページ26
「っんん、……ッふ、」
ちょ……っ、いきなりなんですか! おはようの
口内だけでなく、意識までも貪るような口づけに意識を飛ばしそうになる。わたし、今日は朝から仕事があるのに。
くそう、ここで気絶するわけにはいかない、と我武者羅に口づけについていくと、漸く唇は離された。
「うふふ……嗚呼、本当に君は素晴らしいよ、Aさん。
昨日は断られてしまったけど……矢張り私と一緒に死んでおくれよ」
「はあ、はあ……覚えていませんが、わたしの答えが、変わることは……はあ、ないですよ」
「……如何して?」
伸びてきた指が、鎖骨を誘うように撫でる。
内心で悲鳴を上げてながらもそれを見下ろすと、体中のところどころに赤い鬱血痕があることが判った。
自分の体なのに妙に艶めかしく存在を主張するそれが、恐ろしい。
「君は、幹部に逆らうの? いくら昨夜の全てを忘れられたとはいえ……今から君の記憶にいろいろなことを刻み付けることなど簡単なのだよ?」
「っ太宰幹部、」
「……だから。その呼称は禁止だと言っただろ」
ぞくり、と背中に甘い痺れが走った。
自分を見下ろす、底冷えのする闇色の瞳を見返して……恐怖に体が動かなくなる。
……でも、そこでわたしは気づいてしまう。受け入れてはいけないと。期待をさせるのは罪だと。
……彼とわたしは、理解しあえる存在ではないのだから。
(ああ、違う。これは冷たいんじゃない、闇で一人蹲ることしかできない迷子の目。
でも、わたしでは彼に……置いて行かないでと叫ぶ彼に、手を差し伸べることはできない)
「太宰幹部」
……自覚すれば、もう恐怖はなかった。
彼の顔は歪んだけれど、「太宰幹部」と構わずまたそう呼ぶ。
「目を覚ましてください。わたしではあなたを助けることはできない。
あなたの
……その言葉を聞いた後に彼が見せた泣き出しそうな瞳は、きっと見間違いではないだろう。
拘束する手の力が弱まったのを見計らうと、わたしは無言で体を起こし、急いで服を着た。
……ああ、あと云っておかなければならないことがもう一つ。
「……それに、あなたは必ずわたしを置いて去っていく。
これはもう……決まっていることなんです」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時