血と闇のカーテンコール 一 ページ24
____不意に叫び声が、した。
眼前で飛び散る、不愉快なまでに鮮やかな赤が、嫌に目に残った。
三人だ、三人殺したんだ、と頭の中で響く声は、わたしのものではない。
早く逃げろ、お前だけは、頼むから。
懇願するように耳を劈いたその悲痛な声を、わたしが忘れることはないだろう。
……それは、罪の記録であって、記憶ではないから。
____ああもう、最悪の気分だ。
柔らかな朝日が差し込んで、爽やかな目覚めになるはずだったその朝は……悪夢のせいで最悪な一日のカーテンコールとなった。
軽く舌打ちをして体を起こそうとして、わたしは凄まじいまでに全身が……特に腰回りが怠いことに気が付く。
……そして軽くかぶりを振った後、自分が今どんな格好でいるのかを確認し、
それからすぐ隣で聞こえる息遣いから、今置かれている状況を正しく理解した。
(成程ね……っ!!)
はあ、もう、泣きたい。
“全て忘れている”とはいえ……いやだからこそ、昨夜のことを想像したくない。というか恐ろしくてできない。
腰を襲う鈍痛に耐えながらよいしょと上体を起こし、わたしは深々と溜め息を吐いた。
「……そんなに大きなため息を吐くと、幸せが逃げていってしまうよ?」
「太宰幹部……起こしてしまいましたか。お早うございます」
頭痛を抱えながら隣で寝ていた少年……太宰幹部を見下ろすと、彼はこれ以上なく上機嫌に艶めかしく微笑んでいた。
悲鳴を上げて逃げ出せればどれだけいいだろう。
本当に信じたくないことだが……わたしは昨日、この年下の上司を、家に連れてきたらしい。
……“全部覚えていない”けれども。
「うふ、いい眺めだね」
「あんまり見ないでもらえますか。それと、今から着替えるので向こうを向いてくださいね」
「……昨夜全部見たのに?」
ほんっとに身も蓋もない。
わたしは体を腕と掛布団で隠すと、十八には到底思えない色気を醸し出す上司から目を逸らす。
……このひと、本当に半端ないな。声を聴くだけで腰が砕けそうだ。
とはいえ、わたしも一応は年上としての矜持があるので、顔には出さない。
「はあ、素気ないね。昨夜のAさんはそれはそれは可愛かったのに。
ねえ、また『治さん』って呼んでくれ給えよ」
「昨夜のことを持ち出されても覚えがないので困ります。
わたし、お酒入ると、そこからの記憶が全て完璧に飛ぶんですよね」
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時