探すな、見つけろ 二 ページ11
判らない。まったくもって何が何だか判らない。
わたしは担当する捕虜が来るのを待ちながら、元々は拷問部屋だったはずの捕虜室の中に置かれた、
「何か気に障ったのかな……」
……わたしは自分が有能だとは思ったことは無い。
いやむしろ、昇格もろくに出来ない愚図だとしか思えない。まあ別に昇進を望んでもいないけれど。
よく考えてみなくても、四つも年下の芥川君とは同じ階級で、太宰幹部と中原幹部は二つ年下だ。
確かに拷問、というより尋問能力には優れているかもしれないけれど、あくまで『まあ優秀かもね』程度。
『あらくれ』を併用した行動心理学を用いれば、目の前の相手がたとえ太宰幹部であろうと嘘をつかせない自信はあるけれど、
別にそれはわたしが『拷問官』として抜きん出ているという証明にはならない___というか、太宰幹部の方が情報を引き出すのか上手い。
何故彼がわたしを部下にしたがるのか、理解できない。
「わかんない……」
「何が判らないんだって?」
出し抜けに聞こえた声に驚いて振り向くと、そこには上機嫌に笑う太宰幹部が居た。
少しだけ動揺したものの、わたしは即座に姿勢を正すと、その場で最敬礼する。
「この度のお声かけ、大変光栄に思います。ご挨拶が遅れ、申し訳ございませんでした。
わたしでは至らないところもあるかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします」
「他人行儀だなあ」
面白くなさそうに呟いた太宰幹部が、溜め息をついて肩をすくめる。
「ねぇAさん。折角私の補佐になったのだから、少しくらい心を許してくれてもいいんじゃないかい?」
「はあ。それでもわたしはあくまで上級構成員、幹部殿相手に礼を失する勇気なんて持ち合わせておりません」
「……中也とは楽しそうに話してたのに?」
うん。だからそこが判らない。
太宰幹部はわたしと中原幹部が仲がいいと勘違いしているようだけれど、あくまで上司は上司。だから人事異動がどうなろうと大した興味もない。
心理学では近距離にいることと好意は概ね比例するというが、彼とは結構会うことがあったから、話すようになった……ただそれだけの話だ。
それに、中原幹部とわたしがどんな関係であろうと、太宰幹部には関係なくありませんかね?
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やっさん - さにー☆彡さん» 後書きの羊の宰相、リンク、スタートになってますけど笑。徳田さんの、転生前の本名は、謎のままでしたか... (2019年8月10日 9時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - くどはるさん» ありがとうございます……!!そう言って頂けてとても光栄です!太宰さんは妖艶でないとだめですよね笑ちゃんと書けていたでしょうか笑…続きではありませんが、後書きにある作品がこれにリンクしたものとなっています。ご興味あればぜひどうぞ! (2019年7月23日 7時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
くどはる - こんなに読み込んだ作品は初めてです…作者様の言葉の卓越さや文章の造りに心底惹かれました!!一つの小説として、何度でも読みたくなってしまいます!太宰さん最高に妖艶です。続きを期待してしまいますが、また新しい小説楽しみに待ってます!素敵なお噺ありがとう! (2019年7月23日 1時) (レス) id: 356a43a05c (このIDを非表示/違反報告)
さにー☆彡(プロフ) - 涼風梓さん» なかなかに長い話でしたが最後までお付き合いくださってありがとうございます!!楽しんでいただけてよかったです! (2019年6月6日 15時) (レス) id: 6034bec340 (このIDを非表示/違反報告)
涼風梓(プロフ) - 初コメ失礼します!とても面白かったです!面白くて一気見しちゃいましたw今更かも知れませんが完結おめでとうございます! (2019年6月6日 15時) (レス) id: b666f93d0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さにー☆彡 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hovel/AKOwww1
作成日時:2018年3月24日 21時