6＊ ページ6
A、A____
名前を呼びながら押し倒した。
たった数秒のキスで、顔を真っ赤にして目を潤ませるコイツを見ると、
自惚れてもいいんじゃねえかと思ってしまう。
何度も唇を押し付けて、
熱くなった身体に指を添わせていくうちに、
止められなくなる。
Aが「嫌だ」と言えば止めようと思った。
だけど何回キスしても拒絶されなくて、
むしろ回数が増える度にとろんと溶けたような表情なんてするから。
「ひ、ぁ」
可愛くて甘い声が、ただでさえ酔ってぐらぐらな理性を揺さぶる。
「し、がらき…さ…」
名前を呼ばれる度、少し怖がって俺にしがみつく度。
愛しくて可愛くてたまらない。
「嫌？」
そう言うと顔を赤くしながらも一生懸命に頭を横に振るもんだから、
もう、
何もかもが甘くて、熱かった。
口角が緩んでしまう。
拒まれる不安や緊張が大きすぎて、
普段死柄木は顔が強張ってしまい、
彼女に好意的な言葉を直接掛けられたことがなかったから、
彼女はその顔に、
目を見開いて、思わず言ってしまう。
「死柄木さんは、私のこと、すき？」
乱れていた息の中、彼女は死柄木を見詰めた。
「うん、好き。お前が欲しい」
顔が緩んでるまま、幸福の余韻のせいで
死柄木は言ってしまう。
好意を拒絶されるのが恐ろしくて、
今まで言えなかったことが、
口から溢れ出す。
お前が記憶を失う前から。
お前と初めて会った瞬間から。
初めて会った時、今みたいに笑ってて、
それが好きで、ずっと欲しくて_______、
口から溢れ出す言葉は、彼女の反応を待たずに延々と語られた。
初めて会った日のこと。
それから何度か会ったこと。
お前はねこがすきで、よく餌をやったりしてたこと。
食べものは何が好きで、何が嫌いか。
とめどない過去の話を、
彼女はじっと聞き入っていた。
死柄木が不器用に紡ぐ言葉を噛み締め、
終わった後でさえ余韻に浸る様、微笑んでいた。
「初めて、記憶がなくなる前の話きいた」
「そ、うか…？」
困った様に死柄木が眉を寄せているのを見て、
彼女は少し笑った。
「うん、やっと死柄木さん、話してくれた」
嬉しい。ちゃんと私のこと、すきなんだね。
記憶無いし、思い出話とかできないけれど。
それでもいいなら。
いいよ、ぜんぶ、あげる。
ああ、幸せだ。
死柄木は彼女を強く抱きしめた。
死柄木が、彼女の家族や友人の話は一言も言わなかったことに、彼女は気付いていたのか。それとも。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 875人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華羅夢(プロフ) - ぽいぽいさん» 何ですって！！ぜひ死柄木くん推しになってくださいな！！彼は魅力的な男です！！コメント嬉しいですありがとうございます････！ (2021年9月19日 8時) (
レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - この作品で死柄木くん推しに傾きつつある…好きです応援してます頑張ってください!（ノンブレス） (2021年9月19日 7時) (レス) id: 1142a6ee8a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - れのまるさん» うわああありがとうございます･･････！コメントが1番のモチベになるのですごく嬉しいです！頑張りますね！ (2021年9月14日 14時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
れのまる - 死柄木さん最推しなのでこの作品めっちゃ好きです…！これからも応援してます！ (2021年9月14日 7時) (レス) id: ce403bbca4 (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - しいたけさん» しいたけさん、もしかしなくても2回目のコメントですか･････････？コメント来るのが1番嬉しいので、大喜びで話を書いてしまいました！楽しんで頂けて何よりです！！ありがとうございます！ (2021年9月11日 10時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年8月23日 1時
