43 ページ44
__________いつのまにか、車は走っていた。
車の窓から流れていく景色は、見覚えの無いものだった。
本来なら、そこで違和感を感じた。
学校とは反対側へ向かう車が、
どこへ向かおうとしているか、聞くべきだった。
何故か、思考がぼやけていて、
その問いは口から出て来なかった。
「どうして、会いに、来てくれなかったの」
「色々準備してたんだ。…Aは、テレビとか見ない？俺は今指名手配犯の敵だから、」
自嘲気味に彼は笑った。
「可笑しいよな、
今じゃ無辜の民を殺した殺人鬼呼ばわりだ」
運転しながら喋る彼は、苦しそうに笑っている。
話し続ける彼は、
今までの不満を吐き出して居る様だった。
「でもいいんだ。
Aだけが俺を知ってる。
俺もお前のこと、沢山調べたんだ。
ヒーロー学校に入ったって聞いた時は驚いたよ」
もうそんな所行かなくて良い、と言われた。
彼女は、うん、と虚ろに答えようとして、
頭の片隅で、あの顔が浮かんだ。
「……………でも、とむらくんが、」
つぶやいた。
「帰らないと、」
彼は、沈黙した。
それから、笑った。
「はは、嫌だよ。
誰があんな楽しんで人殺してる奴に渡すか。
前もそうだった」
「前………」
「お前が記憶無くなったの、あれ俺のせい。
騒ぎ起こして、その中でAを連れ出そうとしたんだ、最初は。
でも怪我した子供を助けようとするし。
だから記憶を一時的に飛ばして連れてこうって考えてたんだけど」
記憶を奪ったのは別の敵の筈では、と言おうとするが、声が出なかった。
思考がまどろみ、眠りに落ちようとしている。
彼は悔しそうに言った。
「死柄木弔、ワープゲートなんてチート、使い出してさ。手も足も出なかったよ。俺、あれ以来人殺したことなんてないし、あっちは手慣れてる分、強くて」
ヒーローは来るわ警察は来るわ、逃げるの大変だったよ、とゆうくんは言った。
「なあ、罪のない人を殺す奴のとこなんて行くなよ。
国外に逃げれば誰も俺達に暴力振るう奴なんかいないよ。自由に生きるんだ」
「で、も……」
「A。お前は優し過ぎる。ずっとそうだ。
目の前に怪我をしている子供が居るから、
施設には可哀想な子供達が居るからって。
でも、自分から背負いに行ってそれで壊れるのは、
もう、見たくないんだよ」
頼むから、と言った彼の声は震えていた。
私は、霞み始めた彼の顔をみながら、意識を落とした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 875人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華羅夢(プロフ) - ぽいぽいさん» 何ですって！！ぜひ死柄木くん推しになってくださいな！！彼は魅力的な男です！！コメント嬉しいですありがとうございます････！ (2021年9月19日 8時) (
レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
ぽいぽい(プロフ) - この作品で死柄木くん推しに傾きつつある…好きです応援してます頑張ってください!（ノンブレス） (2021年9月19日 7時) (レス) id: 1142a6ee8a (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - れのまるさん» うわああありがとうございます･･････！コメントが1番のモチベになるのですごく嬉しいです！頑張りますね！ (2021年9月14日 14時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
れのまる - 死柄木さん最推しなのでこの作品めっちゃ好きです…！これからも応援してます！ (2021年9月14日 7時) (レス) id: ce403bbca4 (このIDを非表示/違反報告)
華羅夢(プロフ) - しいたけさん» しいたけさん、もしかしなくても2回目のコメントですか･････････？コメント来るのが1番嬉しいので、大喜びで話を書いてしまいました！楽しんで頂けて何よりです！！ありがとうございます！ (2021年9月11日 10時) (レス) id: 89a4c751b5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華羅夢 | 作成日時：2021年8月23日 1時
