【男主】お前のラップは届かない【ヒプマイ】

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…… 誰もいなくなった瞬間、俺はマイクを外し膝を付く。













動悸がする。





【コレ】を使ってしまった罪悪感で、頭と精神がおかしくなりそうだ。




…… 【コレ】は、本来使用者にも副作用がつく。








使用者は、自分もこのヒプノシスマイクに乗せられた【言葉】に精神を干渉される。



その威力は、尋常ではない。





普通の人間であれば、自分も立っていられなくなるほどの苦痛を味わうことになる。







だが、幸か不幸か、俺はヒプノシスマイクの影響を受けない。







…… 受けないように、【仕込まれた】からだ。










嗚呼、思い出しただけで身体の震えが止まらない。








気持ち悪い。吐きそう。








…… でも、俺は今一人だ。





俺は、家には戻らず、ふらふらと歩き始めた。























とにかく、歩き続け、気付けば知らぬ間に木の生い茂る所に迷い込んでいた。







嗚呼、こういう所に引きこもって、しばらく誰にも干渉されないように生きるのも一つの手か。









歩くのも疲れた、もう何もかもどうでもいい。






絶対に、使わないって決めたのに…









葉の上に倒れ込み、自然と涙が溢れてくる。




【コレ】の恐ろしさも、威力も、受ける苦しみも、俺が一番よくわかっていたからこそ、使わないと誓ったのに。






人生は後悔の連続だ。それでも人は歩みを止めてはいけない。







それでも俺は、生きなければならない。





誰にも、自ら命を絶つ資格なんてない。








苦しくても、辛くても、たとえそれが自分の命であっても、自ら捨てるような選択はしてはならない。






なぜならこの世には、必ずどこかに俺を必要としてくれている誰かがいるからだ。






そんな人は居ない、なんて言ってる奴は、自分の事も周りのことも見ようとしない愚か者だ。








俺は、愚か者じゃない。







かつて俺を【支配していたアイツら】も、元【TDD】も、俺がどんな感情を持っていようと、俺を必要としてくれる人達なんだ。




嫌いでも、怖くても、憎くても、殺したくても、











誰かに求められている以上は、俺は死ねない。




そして、また俺は眠りについた。

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