壱 ページ2
僕の兄様の一日はとても早い。
僕の兄様は、【鬼殺隊】と呼ばれる所の水柱なのである。
正直、僕は鬼殺隊や産屋敷耀哉様が嫌いだ。
兄様がそんなところにいるせいで、任務を任されるせいで、柱なんてものになってしまったせいで、兄様はとても忙しい。
兄様が忙しいということは、その分僕との時間が少なくなるということだ。
実に腹立たしい。
僕は、ずっと兄様のお傍に居たいのに。
そんな事を考えながら、兄様の朝食を作る。
出来上がれば、兄様の部屋まで持っていく。
そして、大好きな兄様を眠りから覚ます。
熾勇「………… 兄様、起きて下さい。朝ですよ。
本日も朝から任務だと伺っております。早く朝餉を召し上がって、ご準備を………… 」
そう言いながら兄様の身体を揺らしても、なかなか起きる気配が無い。
熾勇「兄様?兄様の好きな鮭大根を御用意したのに、冷めてしまいますよ?」
掛け布団を無理矢理剥がすと、少し体を丸める愛らしい兄様。
義勇「…… っん、…… 熾勇、か?」
寝惚けている兄様の頬を、優しく撫でながら僕は微笑む。
熾勇「…… はい。兄様の弟の、熾勇ですよ。
朝餉の準備が出来ております。ほら、起きて下さい。」
まだ少し眠そうな兄様の両手を掴んで身体を起こす。
すると、兄様は深く息を吸った。
そして、どこか嬉しそうに微笑んだ。
義勇「美味しそうな匂いだ。」
熾勇「兄様の為の朝餉ですから。当然です。」
自信満々に言うと、兄様は僕の頭を優しく撫でてくれた。
僕は、この兄様の手が大好きだ。
いつまでも、ずっと撫でていて欲しい。
そう思いながらも、時間は刻一刻と迫っていた。
兄様は朝食を済ませると、すぐに身支度を整える。
そして、僕の手を引いて冨岡邸を後にする。
着いた先は、蝶屋敷と呼ばれる鬼殺隊の隊員たちが傷を癒したりするところ。
義勇「では、行ってくる。」
そう言って兄様は冷たく去っていこうとする。
熾勇「兄様!」
僕が名を呼ぶと、兄様は少し驚いたように振り向く。
熾勇「ちゃんと【御守り】は持ちましたか?」
そう言うと、兄様は優しく微笑み、左胸を抑える。
その反応に満足した僕は、兄様を送り出した。
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作者名:アルビリオン | 作成日時:2020年4月17日 10時