10年目ひよっこおはなし屋

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〜 君は決して自分のことを肯定しない人でした。だけど僕は、君の持つ何かは、僕も周りの誰も持っていないものだと確信しました。〜








あいつ……Aとのメールでのやり取りが始まって2か月と数週間が経った。

最初はAさん、と呼んでいたが、文字でのやり取りということもあり俺の心の中では既に呼び捨てで呼んでいた。


同じ歳であっても異性の名前を呼び捨てで呼ぶなんて俺にはありえないことだ。ましてや出会ってまだ数か月しか経っていない。


それをさせたのは彼女の性格や人となりであろう。






……決して褒め言葉ではない。





表現者とはこうも掴めない、複雑な人種なのか。
もしかして、俺もああなのか……


俺と彼女の性格や表現のこだわりは合わなかった。あいつも同じことを思っているだろう。



毎日文字での戦争だ。
今までSEVENTEENで何度もコンセプトについて話してきたし、何なら俺は口喧嘩に弱い方ではない。なのにあいつはどんどん噛みついてくる。思わず笑ってしまう程に。




メールでさえ喧嘩する始末。


仕方がない。あいつの放つ言葉は何か言い返したくなるのだ。
俺は3回に1回イラっとするが、あいつは3回に3回ともイライラしているのだろう。


向こうは完全に怒っていることが文字から伝わってくるから面白い。






ボーカルチームで朝方まで俺の作業室で曲の打ち合わせをしている時も2時を過ぎれば休憩時間は必ずメールをチェックして喧嘩(メール)を続けていた。



「ヒョン？何で笑っているの？仕事用のメールでしょ？仕事相手の人、そんなに面白い人なの？」



ドギョムは何の気なしに聞いた事だったのだろうが、その言葉で俺は自分の口元にそっと触れてみた。

……俺、ずっと笑ってたのか。



「……何でもない」









他の仕事相手や友達とのメールでは感じないことだった。







ああ、これがこいつの才能なのか。


本人は気付いていなさそうだが、文字の1つ1つに様々な感情を込めて相手に伝える……こんなこと、出来る奴はそう居ないし、俺も羨ましい。



今言ったようにあいつの文字には感情がある。

だから分かるんだ。



ここ最近のあいつの文字は、





迷走。








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