10年目ひよっこおはなし屋

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モッチビ恋愛じゃないって言ってなかっただろ、お前送信した自分のメール見直してみろ。どう考えたって恋愛の話だろ



Aそれは貴方の受け取りの仕方です分かる人には分かります貴方の感受性が疎いんじゃないですかね、女心クソもわからなさそうだし



モッチビそんな分かりにくい表現ばっかしてるから人気でないんじゃねえの、あと女と連絡を取った覚えが俺には無い



A殴るよ



モッチビやってみろ









ッゴン


隣の部屋は空室だと調査済みだ。

この壁を……あのモッチビ野郎だと思いぶん殴る。



なんでこんな最低野郎があんな良い曲を作るんだ。
女心の…いや、人の心のひの字もわかんない奴




気付けば時刻はとっくの間に午前3時を過ぎていた。


ああ、今日も何も進んでいないけど疲れた…もう寝よう…

スマートフォンを弄る余裕もなく私はそのままベッドへ潜り込んだ。









「A！この曲良いじゃない！」




目をキラキラさせてイヤホンを外したのは鈴木さんだ。

モッチビのデモ曲を聴かせたところ、鈴木さんが珍しく人を褒めたのだ。



「この人、本当に有名な人じゃないの？こんな良い曲を書くなんて…しかもこんな売れない小説家のために…」


『鈴木さん、最後のは要らないです』





残りは作詞だけど、この曲調なら誰も文句言わないわ。寧ろ、この曲がきっかけで貴方のドラマを観てもらえるかもしれない。



鈴木さんの目に狂いはない。



売れると言ったら絶対売れる。






私があの時「この人だ」と思ったことに間違いはなかったんだ、という誇らしい気持ちと彼の作った曲に自分の書いた話が追いつけていない、という事で素直に喜べない気持ちの自分が居た。








分かってる。分かってるんだ。
モッチビは……あの人は本当にすごい。



意見の食い違いで喧嘩はしているものの、私の求めている曲にどんどんと近づけて、しかも私の意図していないところで私以上に作品らしさを表現してくれている。



だからこそ、彼の表現が私と原作を越えてしまうのではないかと日々不安が募ってしまう。




……あの人は、プロだ。




……台本、書き直した方がいいのかな。








〜 毎日の口喧嘩、嫌だったら連絡を取らないことも出来ました。

しかし決まって午前2時にPCを開いてしまうのは、

貴方と連絡を取りたかった私の本能だったのかもしれません。〜

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