Ｅ.えぴろーぐ ページ39
てらてらと揺れながら桜が窓から入り込む。机に不時着した花弁を眺めるAは誰もいない教室で1人、黄昏ていた。
黒板には各々が好き勝手に描いた文字や落書きで溢れており、外からは様々な感情が遠く聴こえる。
今日は立海大附属中学校卒業式
胸には一輪の花が咲いていた。
Place your bet……
「A、探したよ」
音を立てて教室へと混ざった幸村は迷うこと無くAの前の席へと座り込む。静かな教室で幸村の声は良く通った。
彼の手にはワンデッキのトランプケース
「何してるの」
「Aと最後に勝負がしたくてさ」
やろうよ。扇情的な彼の微笑みに眉を顰めるA、視線は自然とトランプに注がれた。傍から見ればただのカードゲーム。しかし2人にとっては、とても縁の強い存在だ
「急に、何」
「Aがテニス部に入ってくれた時が懐かしくてさ」
「別に……負けたから入ったんじゃない」
「はいはい、 」
幸村が丁寧に手札を配る。どうやらテキサスポーカーを始めるらしい。不意に彼の手をAが止める。
「何を賭けるの」
告げた通り、ポーカーとは賭け事であり、賭けるものが無ければ勝負にならない。
幸村は想定の笑みを浮かべた
「そうだね……俺が勝ったら、高校でもマネージャーやってよ」
まるで用意されていたような回答にAは溜息を零す。立海は一貫性の学園であり高校へ上がっても生徒はほとんど変わらない。無論幸村達もその例に漏れず、共に同じ入学式を迎える手筈である
だからこそこうして、また同じテニス部としての勧誘は彼にとって必須だったのかもしれない。
「私、負けないけど」
「俺も負けるつもり無いよ」
「……そう」
お互いに挑発的な視線を交え、カードが配られた。自分の手札を確認しながら両者が真剣な顔を向ける。
「聞いてなかったけど、Aが勝ったら俺何すればいい？」
コミュニティカードを3枚捲り、幸村がAに問う。相も変わらず無表情のAは伏せたカードに肘をついて、少しだけ、笑う
幸村にはその動作が、スローモーションのように見えた
「私が勝ったら……また、マネージャーにして欲しい」
邪気の無い微笑み。3年の付き合いだが、果たして彼女のこんな穏やかな表情を見たことがあったであろうか。
目を見開いた幸村がぱちくりと瞬きをして、少し経って頭を抱える
「……ずるくない？」
クスクスと2人を嘲笑うように、桜がまた教室に迷い込んだ
fin
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月李 - 卒業ネタされるとマジ一生泣けます…仕事の合間なのに目がパンパンなるくらい泣きました！素敵な作品ありがとうございました！！！ (2022年9月13日 13時) (
レス) @page40 id: fdd304b262 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - 初めまして、コメント失礼します！学校の授業がつまらなすぎて、ふと目に止まったこの作品を読んでいたのですが、もう授業中なのに笑いが止まらなくて本当にいい意味で困りました！w 神作ありがとうございます！ (2020年2月21日 10時) (レス) id: 08b289ca9c (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - ルドルフさん» ルドルフさんはじめまして！コメントありがとうございます^^*続編も絶賛連載中ですのでどうぞ宜しく御願い致します！ (2019年3月11日 16時) (レス) id: d07a09c4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - 碧氷さん» 碧氷さんはじめまして！コメントありがとうございます！最後に嬉しい言葉が聴けて幸せです；；；；こちらこそ、最後までご愛読ありがとうございました！！続編でもまた宜しく御願い致します！ (2018年11月9日 13時) (レス) id: d07a09c4d9 (このIDを非表示/違反報告)
ろちこ(プロフ) - かもめさん» かもめさんありがとうございました！！壇くんめちゃ可愛いですね；；；；続編できました！！頑張りますので宜しく御願い致します！ (2018年11月9日 13時) (レス) id: d07a09c4d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろちこ | 作成日時：2018年8月2日 3時
