好きでいてもいいですか part3

教育実習 ページ38

まだ、入学式でしか着たことのない真っ黒なスーツに身を包んで





久しぶりにこの場所に足を下ろす






側を見慣れた制服が通り過ぎる





見慣れて、着慣れた制服が






この中にいると、自分は場違いでは無いのかと思うほどだった







まるで入学式のような気持ちで学校に入り、職員室まで慣れたように向かう







三回ノックして、他の研修生と一緒に入室する









ひとりひとり名前を言っていき、私の番








「〇〇大学3年、作田Aです。教科は物理です、よろしくお願いします」






頭を下げるとこれまた見慣れた先生方から拍手が鳴った






教頭が私達を担当教員に割り振っていく







教頭「じゃあ、作田さんは西浦先生、お願いします」






西浦「はい」






教頭「では、これから３週間、よろしく」






すぐに会議が終わって、担当教員の所へ行った







「お久しぶりです」






西浦「戻ってくると思わなかった」





「私も、ここまで出来ると思わなかったです」






最後にあった日よりも、少し低くなった声



優しい雰囲気は度を増しており、笑った顔に少しほうれい線が見えた




大学に通ってから、先生の歳を知った

先生はもう今年で41歳になっていた。






「山本先生は…お元気ですか？」






西浦「あぁ、おかげさまで…娘と楽しくやってるよ」









山本先生は結局、子供を産んでから学校を辞めて専業主婦になっていた



先生の机に家族3人で写った写真が置いてあった





山本先生に似た、柔らかい笑顔と


先生に似た、綺麗な耳の形が印象的だった







西浦「じゃあ、教室いこうか」




「はい」






職員室を出て二人で廊下を歩く





西浦「煙草、減らしてるんだ」




「気づきました、前より顔色がいいです」



西浦「はは、バレバレか」



そんなに変わったかなぁ、と頬を撫でた




あの手が、昔は私の頬を包んでいたと思うと





現実味なんてわかなかった






教室のドアが開いて、生徒の前に立たされた





軽い話のあとに、紹介の場が貰えた






「〇〇大学から来ました、作田Aです。私もここの生徒だったので制服が懐かしかったです…これからよろしくお願いします」






その場の雰囲気から拍手が飛び交った









ここで先生になる方が、現実味なんてなかった

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