4 ページ50
「3点目入れてさっきのとこ見たらいなくなってた」
「あれは、だって……目が合ったのは私なのに」
「……妬いたの？」
「っ、妬いてなんか……」
少し身体を離したと思えば、顔を覗き込まれてしまって。
拓弥くんが笑っていることくらい、顔を見なくたって分かる。
「ないことも、ない」
「ふっ……ばーか」
おれが見てたのはちゃんとAだったよ、なんて。
きちんと言葉にして伝えてくれるようになったのが、彼の昔と変わったところだ。
「誰かさんが急にいなくなるから、そっちばっかり気にしちゃって、1点取られた」
完封で完勝する予定だったのに。
呟いた拓弥くんがちょっぴり子供っぽくて、思わず笑ってしまう。
そんな私を見て恥ずかしくなったのか、照れ笑いを浮かべながら彼が私のおでこを小突いた。
「何してたの？」
「え、と……ここにいました」
「……保健室？」
「うん。福田くんに呼ばれて、消毒液の場所が分からないって」
「またあいつか……」
ぶつぶつと何かを言っている拓弥くんの顔がやけに険しくて。
そうかと思えば、次の瞬間には彼の腕の中。
「あ……拓弥くん、ジャージ」
「いいよ、もうちょい着てて」
耳元で聞こえた彼の声が妙に甘ったるくて。
こんな彼の姿を見られるのは、きっと私だけなんだろう。
なんて思ってたら、唐突に開かれた保健室のドア。
「あれ、邪魔しちゃった？」
「なんだ、海かよ……」
「むしろ俺でよかったでしょ」
慌てて身を離した私とは対照的に、平然としている拓弥くんが信じられない。何も気にすることなく、当たり前のようにベッドに寝転んだ小笠原くんも同じ。
「また寝んの？」
「足挫いたってことにしておいてよ」
「ほんとお前は……」
「俺がいなくても、拓弥くんが好きな女の子のために頑張ってくれるみたいだし？」
「うるせ」
くしゃりといつも通りの笑顔を浮かべた小笠原くんは、ねえ？なんて私に向かって首をかしげてみせた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 385人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ちよこ(プロフ) - 草村 みゆさん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると、書いていてよかったなあと思えます(; ;) 嬉しいです(; ;) 気まぐれな更新が続くかと思われますが、今後ともお付き合いくださると嬉しいです！ (2017年10月9日 23時) (
レス) id: 96b79ece7b (このIDを非表示/違反報告)
草村 みゆ(プロフ) - この話すごく好きです！ 続きも楽しみにしてます＼(^o^)／ (2017年10月1日 17時) (レス) id: d19d8cf885 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちよこ | 作成日時：2017年8月16日 19時
