37 ページ40
「兵長！」
あらかじめ船体の外に括っていた縄を掴む。身を乗り出していたのは副団長補佐——ベン・ヴァイスマンだった。
よりにもよってこいつに近い奴がさっそく現れるか。
リヴァイは彼女に縄を掴ませ、彼女のフードをくいと下に引っ張った。
「兵長、大丈夫ですか」
「あぁ、問題ない」
ベンが身体を横にずらし、リヴァイが上がれるよう場所を空ける。ひょいと身体を引き上げて船内に乗り込み、リヴァイは彼女の方へ腕を伸ばし、その細い手首を掴む。
「もう手を離していいぞ」
「…………」
彼女が縄から手を離す。ずんとリヴァイの手に負荷がかかるが、リヴァイは顔色ひとつ変えず軽々と彼女を引き上げた。
「兵長、そいつは…」
「捕虜だ。部下が何人も殺られた。こいつは俺が預かるから、お前は犠牲者のリストを作れ」
「はい！」
幸い、飛行船に戻ってきている兵士はまだ少ない。船体の奥の空き部屋へ彼女を連れていく間、誰ともすれ違うことはなかった。
先に彼女を中にいれ、リヴァイは後ろ手で鍵を締めた。
「念の為だ。フードはまだ被ってろ」
「……………」
こくんと頷いた彼女は控えめに室内を見渡したあと、リヴァイの方へ振り返り、彼の目をじっと見つめた。
リヴァイはたじろぎそうになるのを何とかとどめた。
「っ、何だ」
「………次は、」
「あ？」
「……………」
ほんの少し顔を顰めてリヴァイを見つめる彼女。何かを求めているかのような目に、リヴァイはハッとした。
ジークとの主従関係。一瞬にして消えた殺気。失われた記憶。
そうか。今こいつは、命令を待っているのか——。
4年前からは考えられないが、今はそう考えるのが妥当だろう。今、目の前の彼女はもうリヴァイが知っている彼女とは別人なのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 422人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんこもち(プロフ) - 無名さん» コメントありがとうございます。確かにマーレ急襲時にはスカーフを巻いていませんが、リヴァイはやはり通常時にはスカーフを巻いていることが多いのでそのように表現しております。分かりにくく申し訳ございません。 (11月19日 11時) (
レス) @page35 id: d1838a7b16 (このIDを非表示/違反報告)
無名 - 854年のリヴァイさんは最初の方だけスカーフをしていなかったと思いますが... (11月19日 0時) (レス) @page35 id: 633d257dbd (このIDを非表示/違反報告)
愛 - 最高スギィ！もう毎朝学校行く前に読ませて貰ってます‼︎これからも頑張って下さい応援してます❤️ (5月15日 2時) (レス) id: 0f2e86f85b (このIDを非表示/違反報告)
んご - めっちゃ最高です！更新頑張ってください！！ (2023年4月30日 7時) (レス) @page6 id: 2dc34b573e (このIDを非表示/違反報告)
高橋 - 頑張ってください！ (2023年4月1日 23時) (レス) id: 2973651174 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あんこもち
| 作成日時：2023年3月22日 16時
