狙うは世界一の妻【ブルーロック】【男主】

#26 ページ30

ピリッと鋭い痛みが足首に走った。
慌ててその場に座り靴を脱ぐと靴下にベットリと血が付いていて小さく叫んだ。

『え、やば、どうしよう』

靴下を脱いで確かめてみるとガラスの破片が皮膚に突き刺さっていた。
手を切らないように慎重に抜こうと指先を添えた瞬間、頭上から声が振ってきた。

「おい、靴下に血付いてるじゃねぇか。なんかあったのか」

『馬狼……。いや実はさ、さっき部屋でグラスを割った時に偶然欠片が入り込んだっぽいんだよな。足首ちょっと切れた』

「待て、下手にいじるな。ピンセット使え」

『医務室』

「歩けんのか」

『下手に動いて傷が広がると困る』

サッカーをやっている人間にとって足は命だ、この足がないと何もできない。普段は怪我をしないように十分に気を使っているのだが、監獄に来てから注意力が掛けているのかもしれない。気を付けなければ。

さて、動けないのでどうしたものかと頭をひねっていると大きな溜め息と共に早く乗れ、と言う言葉が聞こえた。
顔を上げると馬狼がこちらに背を向けてしゃがんでいた。

『いいのか？』

「お前に借りを作っておいて損はねぇ」

『ふは、素直な奴。結構好きだよ』

じゃあ遠慮なく、と 首に手を回し身体を預ける。
立ち上がった途端に変わった風景に思わず笑みが溢れた。

『背高いな、いくつ？』

「187」

『高っ。それに、いい筋肉してる。』

「……お前」

『お前じゃなくて名前で呼んで』

「…………ユウェルは身長いくつなんだよ」

『181』

「チビだな」

『馬狼と比べたらね。でも、もうちょい欲しかったりもする。まあ、もう27歳だから期待してないし可能性も無いけどな』

「……仕方がねぇから今度筋トレ付き合わせてやるよ」

『増えるの筋肉かよぉ』

じゃあそのあとサッカーしてあげよう、今回のお礼ね。とワックスで固められた鋭い髪をいじりながら言ってやると、動きまでピシッと固まった。

「二言はねぇぞ、1on1だ」

『お礼はきちんとするタイプだから』




「＿＿＿＿＿おら、着いたぞ」

『ありがと、ピンセット取って』

「やってやるから足出せ」

『マジか、意外と器用なんだな』

破片を抜き取り消毒し絆創膏を貼る、という行程を流れるようにこなす姿に心臓の鼓動が早くなった。これは誰でもキュンとするのでは。

「終わった。気を付けろよ」

『ありがとうな』

「……またな」

去り際に頭をぐしゃりと撫でられて思わず固まった。あいつも意外と分かりやすいタイプだったか。

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