Ep.54 ページ10
呪いに殺されるの嫌だけど爆弾で死ぬのはいいですーなんて人間、いくら呪術師がイカれてるったっているわけない。
呪いの気配を追いながら祓っている間に、いつのまにか避難誘導の声は聞こえなくなっていた。
爆弾の解除には成功したのだろうか。陣平くんは生きているだろうか。爆発の音はしなかった。生きていると思いたい。
そんなことを考えながら、私の足はすっかり力が入らなくなってしまっていた。呪霊約二十体、五分しないくらいで祓い切った。ハーフマラソン走り終わったくらいの気持ちだ。流石にキツい。
すると、遠くからある人の声が聞こえてきた。
「……や下さーん!?宮下さんどこ!?」
「はーい……三上さん、ココです!」
「心配させないでくださいよ!全然帰ってこな………え!?ど、どうしたんですか、その傷!」
「あーいや、擦り傷だよ。気にしないで」
どうやら連絡が途切れた私を心配して、探しにきてくれたらしい。三上さんは慌てた様子でこちらに駆け寄ってきた。
「さっきこの辺りで呪力の残穢を見つけて……何か事件の騒ぎでもあったようなんですけど」
「爆弾仕掛けられてたみたいね」
「そういうの米花町だけで十分です……」
「私が今払ったのもその騒ぎで生まれた呪霊だよ。
ねぇコレ報告いると思う?」
「いりますね」
「私はいらないと思う………」
「ちょっと連絡してきます」と、彼女は小路を出て行った。
私もフラつきつつも立ち上がる。
あー嫌だな、報告書が増える……。
そう思いつつ小路を出ると、観覧車の前の騒ぎは沈静化されていた。どうやら本当に爆弾騒ぎは収まっていたらしかった。
ぐるりと周囲を見渡すまでもなく、観覧車の前に、陣平くんがいるのを見つけた。
―――声をかけようか、かけまいか躊躇して、結局私は何もしなかった。
警察の人に、刑事と思わしき人達に囲まれて、女刑事さんの頭を、安心させるかのように撫でる陣平くん。上司と思わしき人から一喝されたようだが全く悪びれる様子はなく、さらに研二くんに頬に一発殴られている。
声をかけられるはずがなかった。
私は警察官じゃない。
――――私、どうしてここにいるんだろう。
ふと、そう思った。
研二くんを追ってきたんだ。
陣平くんが死ぬなんて、信じたくなくて。
生きていてほしくて。
………でも、私、何かできたっけ。
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やなり(プロフ) - トマトまとさん» 温かいお言葉をありがとうございます!(T-T) 拙作を好きだと言っていただけて本当にうれしいですし、トマトまと様をときめかせることができたようで良かったです(*^ω^*) こちらこそ、最後まで読んでいただきありがとうございました! (2022年12月13日 14時) (レス) @page28 id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
トマトまと(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!最終話を読んで、裏設定を読んで、更にこの作品が好きになりました。愛っていいなぁと思うお話で、キュンキュンしながら読ませていただきました。素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました! (2022年12月11日 13時) (レス) id: 1d9d2ab89b (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - 愛実さん» お待たせしました!!最終話を更新いたしました。楽しんでいただけたらうれしいですm(_ _)m (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - そらさん» ありがとうございます!大変遅らせながら、最終話を更新しました。楽しんでいただけたらうれしいです(*´꒳`*) (2022年12月11日 11時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
愛実 - めちゃ続き気になる…、!!!更新待ってます!!無理しない程度で頑張ってくださいッ! (2022年10月6日 18時) (レス) @page23 id: e769ed5532 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やなり | 作成日時:2022年8月4日 14時