きっとこの手を離さないで。2【名探偵コナン×呪術廻戦】

Ep.55 ページ11

　
　
　
　
　
　
　
　―――そこでわたしは、悟ってしまったのだ。


　呪術師という職業上、私が守るべきは、力を持たない非術師だ。わたしがいくら強い術師になったところで―――彼の隣に立つ資格を望むことはできない。
　私は、警察官じゃない。
　私は、呪術師だから。



　あぁ、そうだ。
　ずっと見ないフリをしてきた。


　造反した仲間。
　亡くなった後輩。
　約束できない明日。



　世界の暗澹(あんたん)たる淀みを、絶望を知ってなお、止まることのできない呪術師(ゲーム)。


　―――だれかの隣で生きるということに、どうにも呪術師はすぎた重荷である。


　わたしが呪術師であることは、"陣平くんを守る"ということにおいて、――――まったく意味を持ってはくれない。



















「……さん、宮下さん！」

「あ……三上さん」

「報告終わりました。車に戻りましょう」



　戻ってきた三上さんが、次の任務先へ向かうために車へ戻ろうとするのを、私は｢ねぇ｣と引き止める。
　彼女は私を振り返った。


「……？どうかしましたか？」

「この前、話してくれた長期海外派遣の任務があったじゃない？あれ、もう人決まった？」

「いえ、まだですけど……」

「なら私が行ってもいい？」

「え？で、でもあれかなり長いですよ？下手したら五年くらい日本に帰ってこれないかもしれませんし」

「大丈夫。私独身だし」

「………わ、かりました。それも上に報告しますね」


　
　私が以前話を聞いた時、あまりいい反応をしなかったからか、それともタイミング故か、彼女は若干戸惑い気味でそう言い、歩き出した。

　いい機会だ。この間に、長年の想い(呪い)に区切りをつけよう。全部全部忘れて、真っさらにして、これから呪術師を続けられるように。

　結局私は、呪いの(この)世界でしか生きられないのだ。陣平くんを守りたいだなんだと言って、それ以外の生き方を知らずに、ここ十年近く過ごしてきてしまったから。
　

　大丈夫。忘れられる。
　これから五年もあるんだから。


　私は迷いを断ち切るように、観覧車に背を向けて歩き出した。
　
　
　

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