ありったけの愛を、君に。

23 ページ23

２、ゆっくりでいいよ愛してる




藤ヶ谷の告白を受け入れて一週間後の今、俺は再び藤ヶ谷の部屋にいる。
二回目の今の方がこないだよりも落ち着いて藤ヶ谷の部屋を堪能することができている。



「っ、わっ…」
「ふふ、北山…」



…ウソ。今日も俺の心臓は喧しいみたいです。









『俺を…北山の恋人にして下さい』



あの日、藤ヶ谷の言葉に頷いて、俺たちは恋人という括りになった。
藤ヶ谷が俺に向けてくれるような想いをそのまま返せるかと問われればまだ自信なんてないけれど、藤ヶ谷のことを好きかと聞かれたら間違いなく好きだと胸を張って言える。

絆されたのかと言われたら…、そうなのかもしれない。

でもそれだって、好きになったきっかけにすぎない。
俺は俺なりに、藤ヶ谷のことを愛していくんだ。

そう思ってはいるもののあのまま流れに身を任せるのはさすがに勇気が無くて、今日は帰りたいと言ってしまった。
藤ヶ谷はそんな俺に優しく笑って頷いてくれた。



それから今日までの一週間、お互い多忙でプライベートな時間なんてまるで取れなかった。

唯一LINEのやり取りだけは続けていて、ふとこれは今までと何ら変わらないのではと思った。
それが今、藤ヶ谷に後ろから抱きすくめられ身体が硬直した。



何も変わらないはずがなかった。
だって俺たちはもう、恋人になったんだから。



「会いたかった」



耳元で囁く声が笑っている。
嬉しい嬉しいって身体全体で表現してくれているみたいで何だか擽ったい。



「…会ったろ、おととい」
「それは仕事でしょ？ほとんど話できなかったし」
「まぁそうだけど」
「ふふ、でも顔見れただけで俺は嬉しかったけどね」
「っ…」



心臓が痛い。
なんか息がし辛くて、苦しい。



「……」
「…さっ、ご飯作るね。簡単なのしか作れないけど」
「あ…」
「適当に寛いでて」



パッと離れていく藤ヶ谷を見て、俺は小さく溜め息をついた。

24→←22

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す