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「俺は逃げ出したよ。殺されると思ったから。だけど空き家の扉の立て付けが悪くなってて、どこも開かなくなってた。多分探してる時にオッサンがやったんだろうな」
「それで、どうしたんだよ」
「オッサンはずっと歩いてた。足を怪我しててたから走れなかったんだ。だから家中走り回って、ずっと逃げ回ってた。何時間経ったか分からなかった。逃げなきゃ殺されるし家ん中は暑いし、オッサンはうるさいし、最悪だった」
そんで、やっとキッチンの端の方に小さな隙間があったのを見つけたイザナは、その隙間を通り家の外に逃げたのだ。イザナは直ぐに近所の家に行き、息を切らしながら全部話した。それから通報され、オッサンは警察に捕まったのだ。
「家ん中には他にも沢山死体があった。小さい子供にネックレスを探して欲しいって言って、あの家でこっそり殺してたらしい。俺はあともう少しであのオッサンに殺されそうになってた、て事だ」
「……」
「色んなもん見てきたけど、その時初めて生きてる人間が一番怖いと俺は思ったね」
イザナはそのままグルとその場で振り向いた。後ろには下半身がなく、両手で地面を這う男が「イザナ、イザナ、イザナ」とイザナを呼んでいた。
イザナは口ん中にあった飴をペ!と男に向かって飛ばした。そして大股で近寄るとバチン!と頬を張り飛ばしたのである。
「人の名前気安く呼ぶなよ、うぜぇ」
男はパタリとその場に倒れた。ピクと魚のように動くとそのまま「許さない」と呟いて消えたのである。
ココは「え」と目を見開いた。明らかにこの世のものでは無い何かを、イザナが張り飛ばしたのをこの目でバッチリと見てしまったからである。
イザナは音を鳴らしながら手を払う。そして何事も無かったようにココの隣に立ち「いくぞ」と歩き始めたのである。
「なに、今の」
ココはイザナの背中に問いかけた。
イザナはアッサリと「お前狙ってた変なやつ」と言うのだ。
え、俺あれから狙われてたの?と驚いた猫のような顔をするココにイザナは「うそ」とかわゆく笑うのだ。
「俺の客だよ。ウザかったから殴った」
「や、でもあれ明らかにこの世のもんじゃなかったけど、」
「地球の地面に接してるなら全部同じ生きもんだろ」
「いや、でも」
「気にしちゃ負けだ」
「……」
ココは信じたくなった。だって今まで無いもんだと思っていたので。しかしバッチリと見てしまったから、否定したいのだ。
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月野 - この手の話、今まで無かったので新鮮でした!とても面白かったです!!更新楽しみにしています! (2022年10月6日 2時) (レス) @page19 id: dccd327fc0 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 軍時さん» まじですか?ありがとうございます!! (2022年9月25日 22時) (レス) id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
はる - 武道可愛いですねw。空になったペットボトルまだ持ってるなんて…。竜胆は武道になにをあげるんだろう。気になります!斑目の設定考えた主さんが天才すぎる!! (2022年9月25日 22時) (レス) @page19 id: 1a9036ae39 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 特殊な訓練を受けている彼らだからこそ出来る対処法なので実際には…です笑なのでたけみっちがペットボトルをブンブン!と降っても除霊は出来ないことになりますね、かわいいですね🌼楽しいと思って貰えてとても嬉しいです🥰コメントありがとうございました! (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
軍時(プロフ) - 零さん» 大丈夫ですよ〜!ゆっくりにはなりますが更新頑張りますね💪 (2022年9月25日 18時) (レス) id: 9794be9817 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:軍時 | 作成日時:2022年9月13日 11時