桜前線 1【GO】 (ページ10)

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10　夢のような生活ページ10

朝の陽光が窓から差して顔に当たる。自然な目覚めだった。ここは...客室だ。カーテンの向こう側には整えられた美しい庭があって、噴水が絶え間なく煌めいている。そうだ私、神童くんの家に泊めてもらって＿。

起き上がったものの、もう一度ベッドに潜り込む。瞼を閉じると、職場の光景が広がる。支店長に殴られている課長。張り出された成績の中で、最下位として載る自分の名前。張り詰めた表情で怒る課長。

「...戻りたくないなぁ」

この世界に留まっている限り、もう出社しなくて済む。このままニート生活も悪くない。朝は好きなだけ寝ていられるし、ノルマから解放されて余計なストレスをもたなくて済む。夜だって、健康的に早く寝られる。どれだけ幸せなことだろう。もう一眠りしようかと思ったけど、すっかり目が開いてしまった。今何時だろう。自分のスマホで確認すると、AM10時だった。スマホは問題なく使えるようだったけど、連絡帳のデータは全消去されていた。

客室の扉を開いて階段を降りると、執事が迎えてくれた。遅めの朝食を用意してくれたので食べる。バターがたっぷりのクロワッサンと、ホットミルク。おいしかった。

「拓人ぼっちゃまは学校に行っておられます」
「そうなんですね。あの、お庭を少し歩いてきてもいいですか」
「ご随意にどうぞ」

許可を貰ったので、散策することにした。扉を開けて先に進むと、ガーデンルームがあった。柔らかな日光が緑に差し込んで輝いている。ハリーポッターに登場するホグワーツの温室みたい。ここにはマンドレイクはいないけど。

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