桜前線 1【GO】 (ページ25)

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25　vs 万能坂 [1] ページ25

試合当日。ホーリーロード地区予選の入場チケットを握りしめ、会場である万能坂中にたどり着いた。無料送迎バスで会場まで来たけど、すごい坂だった。歩いてくるとなると大変だと思う。それに、坂の途中で怪しい雰囲気のトンネルがあった。夜にあそこへ入るのは勇気が要りそう。

「うわぁ...規模が凄いなあ」

全国大会じゃなくて地区予選なのに、観客席は超満員。注目度の高さを実感させられる。試合が始まった。ホイッスルが鳴るなり、雷門の選手がすぐにボールを奪った。その間、3秒。そしてすぐに自陣のゴールに凄まじいスピードのシュートを放った。

「雷門中剣城、試合早々のオウンゴール！！」

観客席に動揺が走る。予想し得ない展開に、周りはザワザワとし始めた。

「えっ...今の明らかにミスじゃなかったよね？」
「もしかして、わざと？」

様子がおかしいのは、これの出来事だけではなかった。試合の途中、雷門の選手がボールに直撃して倒れた。万能坂選手が雷門選手に少し接触した途端、雷門選手は大袈裟なくらいにダメージを受けている。それが続く。

「なんか...変じゃないか」
「でも審判が止めないんだから、大丈夫なんじゃね？」
「んー、そうだな」

嫌な予感は的中した。徐々に万能坂中が乱暴さを増し、気づけば雷門中選手のほぼ全員がグラウンドの上で倒れていた。異様な光景だった。神童くんがもう一度立ち上がるも、明らかなラフプレーによってまた倒された。思わず立ち上がって彼を心配した。

「神童くん！」

神童くんはそれ以降立ち上がらなかった。いや、立ち上がれなかった。グラウンドに静粛が訪れる。次に立ち上がったのは、天馬くんだった。そんな彼に対して集団リンチが始まる。

「なんであれ止めないんだ？審判は何をしているんだよ」
「酷すぎ...」

敵陣へ真っ直ぐに進む天馬くんのもとへ、次々とスライディングが襲う。そんな中、急に一人の雷門選手が衝突した。そして彼は体の向きを変え、突然万能坂のゴールへシュートを放った。それは他とは比べものにならない凄まじいスピードのシュートだった。

「な、なんと！！雷門中剣城の必殺シュート、デスソードが決まりましたァーッ！！」
「すご...」

力強いシュート。オウンゴールを自ら帳消しにした。このグラウンド上で無双しているのはあの選手一人であり、この試合の要であるのは誰の目にも明らかだった。