桜前線 1【GO】 (ページ3)

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3　同居の始まりページ3

とりあえず今日は泊まってもらうことにした。買って放置していた新品のTシャツとズボン、下着を取り出し、着替え用に置いておいた。女物だけど、緊急時だから仕方ない。スペアキーを渡して外出OKであること、家のものは自由に使って良いことの2点を伝えた。また、彼は携帯を持っていたので連絡先を交換した。今時ガラケーは珍しい。彼の入浴後に自分も入り、すぐに寝た。

翌朝。6時にアラームが鳴り、ソファから起き上がる。少年はまだ寝ていた。普段より支度を急いで出発した。出社後はいつも通りインストラクターから詰められ、1日の業務が終了。飲み会を初めて断り、スーパーで食材を買ってから帰宅した。

「ただいま〜」
「おかえりなさい」

ドアを閉めて振り返る。自分の服を着た神童くんが玄関で出迎えてくれた。私はエプロンを着て、夕食を作り始める。すると、彼が声をかけてきた。

「なにかお手伝いできることはありますか？」
「ううん、ゆっくりしてて」

大学生の頃は一人暮らしをしていたから、簡単な料理なら作れる。パッパとご飯を作って、机の上に並べた。今日は魚料理。旬である鮎を塩焼きにし、手軽に作れる副菜を何品か。

「他にもいくつかお惣菜作って冷蔵庫に入れたから、明日の昼ご飯にでも食べてね」
「ありがとうございます」

共に手を合わせて、お箸に手をつける。どこか緊張感が漂う。無言が続くのは気まずいので、話題を振ることにした。

「今日は一日どんな風に過ごしたの？」
「テレビを見たり、本を読んだりしました」
「へー。どの本だろう」
「あの本です」

彼の人差し指が示したのは、会社四季報だった。それを選ぶとは目の付け所が違う。その後も会話を交わしながら夕食を摂る。神童くんはサッカー部のキャプテンをしているらしいが、その話をする時は浮かない顔をしていた。サッカーがしたいけどできない現状を憂いているのだと思い、今度サッカーボールを渡すことにした。