桜前線 1【GO】 (ページ14)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:3,985 hit

14　目立つ空席ページ14

なんだか悶々としながらダイニングで夕食を摂る。

「失礼いたします。前菜のパテ・ド・カンパーニュでございます」
「わぁ...！」

毎日手が込んだ料理を食べれる幸せを噛み締めながら、笑顔で料理を口に運んだ。前菜の一部を口に運び、目を閉じて味わう。これは...何肉だろう？鶏、いや、豚？しかし、牛かもしれない。もしかすると鹿かも。うーん。これは鹿。心の中でアンサーが出たので、答え合わせをしてみる。

「このお肉って...鹿ですか!?!」
「いえ、豚肉を使用しております」

豚肉か...。いや、そうかもしれないと本当は思ってた。思ってたんだけど、敢えて鹿とした。

「こちら、スープのヴィシソワーズでございます」

ヴィシソワーズ??
乳白色のスープを口に運ぶと、深い味わいが広がった。しかし、これが何のスープかはイマイチわからない。そもそもこれって何料理なんだろう。そんなことを考えながら一皿食べ終えると、次々と豪華な料理が出された。

「鱈のポワレでございます。レモンバターソースをつけてお楽しみください」
「ロッシーニ風ステーキのフォアグラ添えでございます」
「デザートのブラッドオレンジのソルベでございます」

あっという間に平らげてしまった。おいしいなあ。おいしい。正直、永遠にここに住みたい。快適すぎる。朝早く起きて辛い仕事をせずに、美味しいご飯だけを食べられる人生、最高ッッッ!!!

ふと右横に視線を向けた。神童くんは不在で、空席が目立つ。いつもなら一緒に食事を楽しむのに、今日はいない。

『いえ。別に』

あの時そう呟いた神童くんはどこかに感情を置いてきたような雰囲気だった。そういえば、神童くんは今日の昼休みに屋上に呼び出されていたらしい。それと関係しているのかな。そこで何か言われたんだろうか。少し心配だ。

「ご馳走様でした。あの、メイドさん。神童くんに夕食持っていってもいいですか」

そう申し出ると、メイドさんは感激したようにぱっと表情を明るくした。

「Aお嬢様、勿論でございます！拓人さまが思い詰めた顔をしてらっしゃったので、何かあったのではないかと使用人一同心配しておりました。お願いしても宜しいでしょうか」
「はい、私で良いなら」

料理をお盆を乗せて、転ばないように気をつけながら神童くんの部屋へ向かった。