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第136話 ab ページ43

「阿部ちゃんのカルボナーラ美味いよね。」
「どこにでもある味だけどね。」


なんか佐久間の言い方だとアレンジとかこだわりがありそうに聞こえちゃうから恥ずかしい。


「阿部ちゃんのってとこに意味があるの。
他には?」
「んー、最近だとさっきのガパオライスをめめに食べてもらったのと…。
あと、ビーフシチュー作った。」


ほら、と写真を見せる。
そうしたらなぜか微妙な顔された。
え、美味しくなさそう?


「俺阿部ちゃんのビーフシチュー食べてない。」
「まあ、そうだね。」


だってこの写真の一回しか作ってないし。
外出出来なかったからオフだとやれることが限られてて、それで挑戦したやつ。


「ガパオライスだって俺が一番じゃなかったし…。」
「めんどくさ。」
「うわっ、開き直りやがった!」


ばさりと切ったら余計に騒がれた。


「阿部ちゃんの一番は俺が良いのに。」


ぎゅーって横から抱きしめられた。
いやなんか抱きつかれてるに近い気もするけど。


「まためめに嫉妬?」


なんて冗談めかして聞いてみる。


「…そうだよ。」


思ってたより真剣なトーンで返されて戸惑う。


「俺だけの、だったのに。」


両方の頬を佐久間の手が包む。
その言葉に、仕草に、胸が痛む。
だって、


「今は、違うの?」


俺には、佐久間しかいないよ。
でも佐久間には、俺がそう映ってないの?

引き止めるみたいに、佐久間の左手へ自分の右手を重ねた。


「ううん。
俺だけのもの。」


そう言って、佐久間がキスをくれた。


「そうだよ。
変なこと言い出すからびっくりしたじゃん。」
「ごめんごめん。」


眉をハの字にして、佐久間が静かに笑う。


「勝手に誰かになんて渡すなよ。」


そう言って今度は俺からキスをした。


「んっ…」


佐久間の腕が俺の腰に回されて、そのまま何度も唇を重ね合った。


「はっ…、」


息を取り込もうとしたその時、窓から差し込む柔らかな日差しが佐久間を照らしていたことに気付く。


「ん、」


どうしようもなく欲しい人が目の前にいて、お互いに求め合っている。
この空間が、俺の無くしたくないものだった。

思わず佐久間の首に両腕を回す。
どうか、離れないで欲しいと願って。
そのためなら、どんな嘘も、愚かな行為も、やり抜くから。
例えそれが、他人から見たら浅はかな選択でしかなかったとしても。

だから、どうか。
佐久間を、取り上げないで。

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葉子(プロフ) - ゆきのさん» この音声が公開される日はあるのか否か…、ですが、この事務所なら切り貼りしかねないですよねぇ!どうやってこの沼から脱出するのか、誰がその一歩を踏み出すのか、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです! (2021年2月6日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - かおるさん» この小説で何度目だ!?と突っ込みが来そうな展開で申し訳ありません(汗)相変わらず可哀想なあべさんです…。さくまさん視点更新しますね…! (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» 忘れずにいてくださったことに感謝です…!下書きが最近あまり進まないのですが、こんなに長い丁寧なコメントいただけたので、すごく励みになりました!頑張ります! (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» ーの助けはあると良いですよね。事務所側にも完全に陥れられている状態なので…。さて、mmさんがどう振る舞うか、iwsk、iwfkがどうなるのかは、さすがに愛の権利4で明かしたいところです!後者二つは最近mmab案件で完全に放置しているも同然な扱いですみません…!最早 (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» 文明の進化ってある意味厄介なところありますよね、リアルでも。と、思っている機械音痴な私です…!今までのことも譲るのが1万歩だったことに思わず笑ってしまいました(笑)そんなに譲歩してくださるとはある意味お優しい!(笑)確かにこれだけ泥沼化しているのでメンバ (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉子 | 作成日時:2021年1月17日 0時

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