愛の権利３＿skab

第121話 mm ページ28

「ありがとう。」


そう言った阿部ちゃんは、どこか泣きそうにも見える顔で微笑んでいた。



ちょっとすると、阿部ちゃんがガパオライスを食べ終える。
そして穏やかな表情でスプーンを置くと


「じゃあ、めめって心強い味方がいる時に電話しちゃおうかな。」


なんて言い出した。


「え、佐久間くんに？」
「うん。」
「俺いない方が良くない？」


だって阿部ちゃんは正直に言えば俺とキスしたくないわけで。
なのに近くに俺なんて居ちゃったら、その本音を佐久間くんに相談したり吐き出したり出来なくない？


「ううん、いて欲しいんだよ、寧ろ。」
「何で。」
「感傷的になりたく無いから。」


それはつまり、阿部ちゃんの本音がそこにあるってことでしょ。
それにフタなんかする必要ある？
だって佐久間くんなら、そういうこともきっと受け止めてくれると思うけど。


「どうして。」
「まあキスも二回目だしねって、佐久間が深刻にならずに流してくれるのが一番良いから。」


佐久間くんがきっと阿部ちゃんを守りたいと思っているように、責任感が強すぎるこの人もまた、守られるだけじゃなくて佐久間くんを守りたいって思ってるんだろう。
もう傷だらけのくせに、どうにか隠そうとして。


「あ、これは佐久間のためとかそんなんじゃなくて、俺のためだから。
心配されて根掘り葉掘り聞かれて苦し紛れに誤魔化すより、写真が載ってからもさらっと流してもらった方がミスリードを誘ったことがバレなくて済むじゃん。
記者さんが話でっち上げてんなーって、その程度で今回のことは通り過ぎて欲しいわけ。
だから俺としてはめめにいて欲しいんだけど、だめ？」


強がりを隠してそんな風にお願いされると無碍に断ることも出来ず、


「まあ、ここにいた方が良いならいるけど…。」


なんて返していた。





「あ、佐久間？」


佐久間くんの声が聞こえただけで嬉しそうにしてる。
その顔に、なんとなく康二を思い出す。
とは言え最近はめっきり見なくなった表情だけど。


「へえ、照とジムかぁ。」


佐久間くんの今日の予定とか話してる。
佐久間くんって最近すごい岩本くんと仲良いよね。
収録中だけじゃなくてスタッフさんの前とかでも本当に恋人みたいにくっついてるから、イメージ崩さないように頑張ってんだなと思ってたけど。
オフの今日も一緒か。

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