愛の権利３＿skab

第110話 fk ページ17

突然頭上から声がして顔を上げれば、そこには照がいた。
見られたんだ、と悟る。


「ああ、今写真整理しててさ。」


見返して感傷的になってました、だなんて言えるわけない。
俺が突き放したんだから。


「何だよそれ。
消そうとしてたってこと？」


その言葉に思わず唾を飲む。
だけど同時に、チャンスなのかもしれないと思った。
今の照の勘違いを肯定すれば、俺が感傷的になっていたのがバレなくて済む。


「そうだよ。
だってもう、過去のことじゃん。」


消したくなんてなかった。
だって、最後の一枚だ。
だけど、恋かどうかはさて置き、照は新しく一緒にいて楽しい相手を見つけて、楽しく生活してる。
だからやっぱり、俺とはこのまま決別したままがちょうど良い。

ほらな、なべ、言ったじゃん。
俺らは一緒にいない方が、傷つけ合わずに済むんだよ。


「過去って、」
「康二がいっぱいカメラのデータ送ってくれるからさ。
容量やばくて、昔のは消すしかないんだよね。」


削除しますか、とスマホに表示される。
するよ、しなきゃいけないんだ。
覚悟を決めて、画面をタップする。


「っ、そうかよ。」


そう言って、照はまた佐久間の方へ戻った。
…なんで、照が苦しい顔すんだよ。
新しい生活で、佐久間と楽しくやってるから、背中を押したのに。
忘れられなくなる、そんな顔されたら。





康二、舘さん、翔太の順で家に送られ、最後は俺。
車に揺られながらカメラロールを開いて、写真と写真の間の、照との写真が本当ならあったはずの場所を撫でた。
もうどこを押したって、戻ってなんてきやしないのに。


「岩本さんって佐久間さんと本当に付き合い始めたんですかね？」
「は？」


運転していたマネージャーさんの問いかけに驚く。


「いや、なんか距離感が。
深澤さんなら岩本さんと仲良いので知ってるかなと。」
「さあ。
俺も最近は照といないし。」


そう答えて、カメラロールを閉じた。
でもそうだよな、これだけ近くにいるマネージャーだってそう思うんだ。
実際のところ佐久間には阿部ちゃんがいるから付き合っては無いにしろ、照は確実に、新しい生活に楽しみを見つけて歩き出してる。

ああだから、消えてくれよ。
照の苦しそうな顔に、意味を見いだそうとするバカな俺の考えなんて。

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