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第99話 ab ページ2

便箋を持つ手に力が入る。
だってそうでもしなきゃ、何かが零れそうだった。





「あ、もしかして返事?」


お風呂あがりのめめがテーブルの向かい側に座る。


「うん、折角なら書いてみようかなって。
佐久間みたいに便箋選ぶ時間は無いけど。」


さすがにこの時間じゃ買いに行けないから、手持ちのシンプルな白い便箋になっちゃった。


「これ阿部ちゃんのために選んだんだ。
青にするの、なんか意外かも。」
「ん?
ああ…。」


メンバーカラーで言うと緑だもんね。


「佐久間はさ、昔した話をずっと気にしてくれてるんだよね。」


思い出して、くすりと笑う。
嬉しいのと、くすぐったいの、ってとこかな。


「わりと最近皆にも話したかもしれないけど、家族のメンバーカラーの話。」
「ああ、あったね。」
「弟に青を譲ったって話をしたでしょ?
それを初めて佐久間にした時から、俺は阿部ちゃんが本当に欲しいものをあげるから、とか。
笑顔にするから、とか言い出して。
俺別に気にしてないのにね。
ただの思い出話のつもりだったし、幼心にお兄ちゃんらしいことをしたくて弟に青を譲っただけでさ。
なのに佐久間ってば、俺より俺のこと気にするから。」


あはは、と、笑ったつもりだった。
いや多分笑えてたんだけど、なんでか泣けてきて。


「そんな風に、いつだって全力で、俺のこと考えてくれてた…、っ。」
「佐久間くんは本当に、阿部ちゃんが大好きなんだね。」


めめの優しい声に、思い出す佐久間の笑顔に、涙が止まらない。

俺以上に俺を大切にしてくれた人。
俺が幸せにしたくて幸せに出来なかった人。
その人に、こんなに離れてしまって、何が出来るっていうんだろう。


「阿部ちゃんから返事もらえたら、佐久間くんめちゃくちゃ喜ぶんだろうね。」
「そうだと良いけど、どうなんだろうね。」
「俺、明日渡そうか?
雑誌は違うけどスタジオ一緒だから。」
「本当に?
ありがとう。」
「俺、阿部ちゃんのためならパン屋でも郵便屋でもなるからさ。」
「ふはっ、それは頼もしいね。」


ちらりと、もう一度佐久間の手紙に視線を向ける。
そうだね、泣いてばかりいても仕方ない。
折角こうして、支えようとしてくれる仲間だっているんだから。
佐久間の気持ちに、俺も応えたい。
それにこれは記念日の手紙。
それならやっぱり、日付が変わるまでに書き上げないと。
うん、まずは自分に出来ることから、だよね。

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葉子(プロフ) - ゆきのさん» この音声が公開される日はあるのか否か…、ですが、この事務所なら切り貼りしかねないですよねぇ!どうやってこの沼から脱出するのか、誰がその一歩を踏み出すのか、ぜひ見届けていただけたら嬉しいです! (2021年2月6日 22時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - かおるさん» この小説で何度目だ!?と突っ込みが来そうな展開で申し訳ありません(汗)相変わらず可哀想なあべさんです…。さくまさん視点更新しますね…! (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» 忘れずにいてくださったことに感謝です…!下書きが最近あまり進まないのですが、こんなに長い丁寧なコメントいただけたので、すごく励みになりました!頑張ります! (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» ーの助けはあると良いですよね。事務所側にも完全に陥れられている状態なので…。さて、mmさんがどう振る舞うか、iwsk、iwfkがどうなるのかは、さすがに愛の権利4で明かしたいところです!後者二つは最近mmab案件で完全に放置しているも同然な扱いですみません…!最早 (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)
葉子(プロフ) - みなみさん» 文明の進化ってある意味厄介なところありますよね、リアルでも。と、思っている機械音痴な私です…!今までのことも譲るのが1万歩だったことに思わず笑ってしまいました(笑)そんなに譲歩してくださるとはある意味お優しい!(笑)確かにこれだけ泥沼化しているのでメンバ (2021年2月6日 21時) (レス) id: f3c5f4857a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉子 | 作成日時:2021年1月17日 0時

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